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フラッシュバック
「はあッ…子規…」
「いやちょっと待ってください先輩俺ちょっとそういうんじゃないんで本当無理だって」
襲われた。誰にと言えば、先輩に。
風呂先使っていいよ、と言われ先に風呂に入れてもらい、サッパリしたところでコンビニで手に入れたおにぎりとお茶を食べていた。その間に先輩も風呂に入っていたので、俺は床でスマホを眺めて先輩が風呂から上がるのを待っていた。
風呂から出てきた先輩がベッドを譲ってくれることになり、遠慮しつつもお言葉に甘えてベッドに横になった瞬間、事件が起きた。
先輩の手が俺が着ているトレーナーの中に入ってくる。今日は着替えを持ってきていなかったので、先輩の物を借りたのが仇になった。俺だって標準身長だというのに、先輩の身長は異常にデカい。そんな人物のトレーナーを借りれば、そりゃブカブカだった。
必死に抵抗をしていると、先輩も体力の限界を迎えたのか俺の腰を張っていた手は俺の両腕を拘束するのに精一杯だ。
「先輩、やめてください!」
まだ自由な両脚を暴れさせるも、俺の腹の上にいる先輩には効かない。
お互い体力がつき、風呂から上がったばかりだというのに汗まみれで息を切らしている中で、どこか冷静な自分がいる。
さっき買ったコンドームの使い道、俺かよ…!と先程までののんきな自分にビンタをかました。
先輩の顔を見上げると、目を血走らせて息を切らしている様子が見て取れて、背筋が凍った。待てよ、このままじゃ俺のケツが危ない…!俺のケツは未来永劫処女のままなんだよ…!
「どうして今日はそんなに抵抗するんだ? そういうプレイがお望みか?」
無口な男がやっと発言したかと思えば、突拍子もないことを言い始めた。
「は、はあ!? そんなわけないだろ!?」
拘束されている腕に力を入れて暴れようとするも、上から両手で押さえつけられてしまっているため動くことは叶わない。
「最初に誘ってきたのは、お前だろう。色んな男を相手にしすぎて頭でもおかしくなったか?」
「頭おかしいのは、アンタだろ!」
そう叫んだ瞬間、またしても思い出したように記憶が蘇る。
白いドレスに赤ワインが垂らされて、赤紫に染まっていく。身動きのとれない自分は、必死に抵抗するも背後から捕まっていて身動きが取れない。口の中を出入りする汚物に、喉奥を突かれて嘔吐く。
「…子規?」
「あっ…トーカ、アオ、セイ、ヒッ…みんな…」
自分が何を口走っているかなんてわからない。それでも、溢れていく言葉たちをとめどなく零していった。
赤い花びらが、空から降り注ぐ。
思い出せ、取り戻せ、と本能が叫んでいる。
様子がおかしい俺を心配した先輩の力が緩んだことに気が付いた。俺がどんなに頑張ってもつかなかった腹筋で思い切り起き上がり、先輩に頭突きを決める。
暗い部屋にガツンッという音が響き、先輩はそのまま気絶したようだ。
「…帰ろう」
俺は洗濯されまだ乾いていない自分の服を着て荷物をまとめて、そのまま先輩の部屋を出る。オートロック式の鍵だから、戸締りもしなくていい。
深夜2時。電車も動いていないし、店も空いていない。ホテルに泊まる金ももったいなく思う。沈黙の街は足元から俺を呑み込んでいくようだった。
どこに行くあてもなく、フラフラと歩いているとスマートフォンの通知がなった。
『久賀:不在着信』
「…もしもし、久賀?…うん、うん…ごめん、迎えに来てほしい」
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