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第8話

「きっと番うと言えば貴方の家族は反対する。運命だからなんて通じない」 確かに両親だけではなく、親族もΩの血を入れる事を許したりしない。 αはαと結ばれ、αを残すのが当然だという考えの家だ。 オレもそう思っていたし、疑問にも思わなかった。 「本気で番うつもりなら、貴方の家族を説得しなきゃいけない。オレにそんな価値はないし、説得出来るなんて思えない」 なんの反論も出来なかった。 さっき会ったばかりのコイツをいきなり連れて行って番にするなんて、そんな話を「わかった」と簡単に頷くような親ではない。 「だったら……最初から出逢わなかった事にした方がいい。そして二度と会わなければいい」 コイツの中で勝手に話が決められていく。 冷淡に、抑揚のない声で突き放される。 今起きた事を忘れてしまえば、オレ達はこの車を降りた瞬間から他人になる。 運命の番なんて都市伝説だよ、と笑って冷やかせる。 確かに今ここにお互いの明確な恋心というものはない。あるのはフェロモンの匂いだけだ。 「でもだったらなんでこんなに……」 傷跡に巻かれたハンカチを見た。微かに血が滲んでズキズキと痛む。 こんな傷を負ってまで無理矢理犯す事を我慢した。それはコイツがあまりに怯えるから。 そして、その怯えるコイツを守りたいと……優しく扱いたいと思ったから。 それが運命の為せる力なのか? 何方かと言えば、その運命とやらはオレに無理矢理犯して契れと言っていた。

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