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第6話

どのような悪党かと広間に入ってみたサルバトーレの視界に、金の鎖に繋がれた真っ赤な髪の青年が、こちらを真っ直ぐに見つめているのが目に入った。 精悍な顔つきは今までに見た供物と呼ばれる者達とは異なり、意思の強さが伺えた。 近寄ると甘く柔らかい花のような香りが漂ってきて、サルバトーレは意識を保とうと視界を逸らして奥歯噛み締めた。 目の前にいるのは罪人で、大切な民を危機に陥れた男である。匂いにつられて甘い言葉などかけてはいけない。 必死で威圧を込めて発したサルバトーレの言葉に、畏怖もなく青年は頷いて頭を垂れた。 「神域を侵したのは、まぎれもなく私でございます。神域とは知らずとはいえ、被害が出てしまったとのこと、我が命をもって償わせていただこう」 物怖じもせず、はっきりと通る声で非を述べる口調には偽りは含んでいなかった。 漂う香りに青年の方も意識を逸らそうとしているのか、呼吸の回数が少ない。 自分が触れる気もさらさらなかったのだが、内側から漂う引力にはとうてい勝てぬな。 サルバトーレはくわっと口を開き、青年の腰布に牙を引っかけて口に咥えた。 一瞬目を見開き青年は身体を強ばらせたが、すべてを委ねるように力を抜いてサルバトーレの鼻づらを覗き込む。 「喰らわれることも、覚悟の上……いかようにも」 諦めとも聞こえる口調だが、どこか上の空にも聞こえるのは、漂う甘ったるい風のせいかもしれない。 この姿のままで交わる気はなかったのだが。 いつまで強気が続くのか試してみたくなり、サルバトーレは、ひょいと鼻の上へとカムルの身体を放り投げて頭の上に載せると、元来た廊下へとずんずんと戻り始める。 「王よ。その者を閨へ連れていくのですか」 サルバトーレの行動に焦った側近が慌てて駆け寄ってくる。 サルバトーレには供物として捧げられた妾が何人もいるが、子供を為したことがなかった。 しかも正式に妾としての作法を知らぬ者が、閨に入るなどということはなかった。 「喰らおうが何をしようが、罪を償うとのたまう。その意志を確認するだけだ。口だけ勇猛な男など珍しくもないが……」 匂いに惹かれたのもあるが、獣化した己を真っ直ぐに見つめる人間が珍しく、サルバトーレは興味があるのだと、自分の閨に入るとカムルの身体をふんわりと綿を敷き詰めたベッドの上に放り投げた。

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