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第7話

大きな顔を近づけられた時に、いくら喰われはしないと言われていたにしても、カムルはここで終わりかとの覚悟を決めた。 しかし傷つけないように噛まずにくわえて、頭の上に放りあげられた時に大丈夫だと心の底で安堵を覚えた。 少し熱をもった蒼銀色のふさふさとした体毛は、肌を擽りほんわりとした心地よいかおりに包まれてぼんやりとしている間に、柔らかい綿のベッドの上に放り出されていた。 見上げた狼の顔は険しく、今度こそ取り殺されるのかとカムルは大きく息をついたが、不思議と恐怖感はなかった。 「我が怖くはないのか。罪人よ」 低く唸るような獣人王の声は幾分戸惑いを含んでいた。 「怖くはない。処刑されても後悔は無いのです。乾きに死にかけていた部下を見捨てる選択肢はなかった。そのせいで、民を害したことには変わりないから……いかようにも……」 「他人のために己の身を犠牲にするとは、愚かだが殊勝だな」 「他人のためではない。ただの独りよがりな……私の自己欺瞞です」 サルバトーレの馬鹿にするような言葉に、カムルは自嘲を含んだ半笑いを浮かべて、ゆっくりと蒼銀色の大狼に向き直る。 砂漠の救世主と呼ばれているこの獣人王が、覇王樹の加護を受けて国を護り発展させ、また悪神と戦ったという武勇伝をカムルは耳にしていた。 騎士としてその武勇伝は憧れを抱いて、いつかは会ってみたいとも思っていたが、彼にとってカムルはただの罪人で供物でしかないだろう。 「我が神域の扉は、貴様が手をかけたら開いたと言ったな」 「ああ……日陰を求めて必死だったから良くは覚えていないが……勝手に開いた」 まるで誘うようにその扉が開いたのを覚えている。 水分を求めてさまよっていたカムルには、それがどこなのかも考える余裕はなかった。 大狼の蒼いギラつく瞳は穏やかに陰りをみせて、のしりとベッドの上に身体を乗せて、カムルの腰布を牙に引っかけて剥がすと、生暖かい舌をざらりと褐色の肌に這わせる。 「っ、うわ、ッーー!?」 「なんとも色気のない声だな」 鼻面を押し当てて、サルバトーレはくんくんとカムルの匂いを嗅いでから、ザラザラと何度も舌を這わせ身体全体を舐めまわす。 やはり、喰われるのか。 覚悟は決めていたはずだが、下半身が熱をもってきて頭がぼんやりとしてきてカムルはあまりの心地良さに浅い呼吸を繰り返す。 カムルは騎士団長になるまで、実直が故に恋愛や色恋などの経験はなく、サルバトーレが何をしようとしているのかまったく想像がつかなかった。 「脚を開け。供物としての最初の閨を我がつとめてやろう」 悠然と大狼に言われて、わけもわからずにカムルは両脚を開くと尻のあわいにそって大きな舌が舐め回していく。 「ーーっ、ま、まて……く、くらうのか、あっ、く……っ」 「食いはしない。供物の勤めをさせるだけだ」 カムルが訳が分からないと混乱する様子に面白がるように、鼻の先を肌に擦り付けて、低い声音で囁いた。 「わからないか。貴様は我とこれから交尾をするのだ」

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