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第14話

目の毒だ。 カムルは部屋に戻り、何故か自分の寝台に裸で横たわる半裸の青年に表情を凍らせた。 何故とかどうしてとかいう以前に、彼の姿の神々しさに圧倒されてしまう。 眩いくらいの銀色の髪は夕日にキラキラとオレンジ色に照り生えて、正気では正視しがたいくらいの美しさで、カムルは近寄るのを躊躇い入口から動けなかった。 「何故、このような場所に……?」 「我が王宮だ。我がどこに行こうが自由だろう。人の姿で見ると、貴様はデカいなあ」 自由は自由だろうが、言動すらも自由すぎるなと思いながら、間合いをとりながら少しづつ近寄る。 「なにか饗せることができればよいが、粗忽者ゆえ、芸事には……」 カムルが言葉を言い終える前に、サルバトーレは寝台から立ち上がると、グイッと大きな身体に突進して抱きつく。 「な、何を……」 焦ったカムルを気にする様子もなく、若き王はその褐色の肌に鼻先を擦り付けて匂いを嗅ぐ。 「この匂いには中毒性がある……我も貴様が気を失ってしまったのを反省して、数日は我慢したのだ」 スーハースーハーと頭の下で息を繰り返す王の姿を眺め下ろして、同様にくらくらと甘い香りが漂い始めるのに喉を鳴らす。 この感覚は……。 これ以上ここにいてはダメだとは思うのだが、身体は思うように動かない。 「貴方からもとても甘い匂いがします……これは、あの覇王樹から香っていたのと同じ匂いがします」 じっとりと肌が濡れて、唇が自ずと開いてしまう。胸筋が上にあがって、身体に緊張が走ったように動けなくなり、パタリと杖を倒してしまい身体をぐらつかせる。 「貴様のような重い身体は、人の姿の我では運べぬわ。さっさと衣を脱いでそこに横たわれ」 命じることに慣れた青年の言葉に誘われるように、衣を下ろして寝台に身体をのせる。 どのように誘ったのか、先程ジェラーフに聞かれたが、匂いに二人が当てられているだけで、どちらが誘ったとらいうわけではない。 毒になりそうなくらい、美しい身体の青年が陶然とした表情でこちらを見ているのに、カムルは耐えきれない気持ちになる。 ジェラーフのような美しい青年ならまだしも、ここにいるのは、無骨なたおやかさの欠片も柔らかさもない身体をもった男だけなのに。 鼻をくすぐる匂いに、頭をやられてしまっているだけなのに。 「貴様が罪人でさえなければ、後宮に入れて離さぬものを」 そう告げるとサルバトーレは、ゆっくりとカムルの弾力のある身体の上へと覆い被さる。 「勿体ない言葉です……その……お気持ちだけで……私は……」 「貴様の気持ちなどどうでもいい。我が離したくないのだ」 礼を述べるカムルの言葉を遮り、ゆっくりとサルバトーレは唇に唇を重ねて吸い上げた。

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