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第18話

「やっと会えましたね。昨日も一昨日もこないから待ちぼうけしちゃいましたよ」 柔らかい日差しの中でキラキラと金色の髪を纏わせて、護衛を背後に従えてジェラーフはカムルの前にやってくる。 別に後ろめたく感じる必要はないのだが、ジェラーフに対してどういう表情をしていいのかカムルが戸惑いを見せると、綺麗な笑顔を向けられる。 「大丈夫ですよ。そんな顔しなくても。私たちは供物ですので、同士なのですよ。いちいち嫉妬などしていては心身がもちません」 あっけらかんとした語調で言われて、カムルは胸を撫で下ろす。身体が辛くて外に出られなかったのもあったが、彼と会った時にどんな顔をしていいのか分からなかったのも庭から足を遠のかせていた。 「でも、ここのところ後宮の広間で顔をあわせても、王は貴方の話ばかりで。よほど気に入られた様子でしたよ」 「あー、いや。私は貴方のように美しくはないので……彼には物珍しいだけかと」 噴水の傍に腰を下ろして、身体を伸ばしてギシギシとする感覚に、カムルはふうと息をつく。 「確かに美しいとは言わなかったね。貴方の身体が強そうだから、きっと子供も勇猛になるってとても興奮していたよ。私も貴方の武勇伝を教えてあげましたよ。私たちは、幼いころからずっと一緒にいたから、なんでも話してくるんですよ」 ジェラーフは、彼はデリカシーもない性格だからと嘯いているが、そこに親しい間柄が見えてカムルは暖かな気持ちになる。 「そうか、君以外にも後宮には沢山いらっしゃるのかい」 他にもサバサバした人が多いのかと思い問いかけると、五人ほどいると話してから、ちょっと考え込み全部がオメガではないのだと告げた。 「私は正妻だから、危害を加えるようなことをする人はいないのだけど、他は嫉妬でバチバチするところもあるみたい。だから、あれほど王が貴方に執心しているのを、他の方がどう考えているのか……私も用心しますね。貴方のことは気に入ってるので」 何か不穏な動きがあれば、教えますと友好的に告られてカムルはほっと息をついた。 ジェラーフは正妻のようで、恐らく後宮の中でも力がある方なのだろう。 「それは怖いな。じゃあ先に貴方に出会えて良かったのかもしれないな」 更に深い話を聞くと、どうやらドロドロとした争いもあるようで、シナールで聞いていた後宮とはあまり変わらないようだ。 待遇を変えて後宮に迎えたいと王は言っていたが、話を聞き終えた後には、あわよくば断ることはできないだろうかとカムルは考えていた。

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