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第21話
身体の怠さと食欲不振、そして目眩がすることを伝えると、見た目は屈強そうだが医師だと言う中年の男は顔をしかめてカムルを睨んだ。
「……体調不良は、砂漠に出る前からだな。何故王に言わなかった」
「直接は話せなかったので、ガルパ様には伝えたのだが、厳命で同行は断れないと」
カムルは怒り口調の医師に、ムッとした表情で言い返すと、医師はテントの中に王を呼ぶように伝える。
「……大丈夫か。モリア、カムルの具合はどうなんだ」
ジャラジャラと金属音を響かせてサルバトーレはテントの中に入ってくると座っているカムルの隣に腰を下ろす。
「サルバトーレ王。一刻も早く、カムル様を王宮に帰らせなさい。この砂漠を超えるのは今の彼には無理だ」
「そんなに重い病なのか」
不安に満ちた顔でサルバトーレは医師の顔をぐいと覗き込む。
「カムル様は病ではないが、命に危険がある」
厳かな口調で医師はサルバトーレの顔をじっと見つめる。
「病ではない」
「ああ。彼は妊娠している。具合が悪いのは悪阻だ……」
サルバトーレの顔が歓喜に満ち溢れ、ぱああと銀色の髪が広がるように跳ねる。
カムルは信じられないように己の下腹部を見下ろした。
この腹の中に別の生命が宿ったというのだろうか。
「では、我も宮殿に戻るぞ」
「王には参詣の義務があります。カムル様だけ護衛をつけて帰すのです」
「……一人で帰すのは不安だ」
「私なら大丈夫ですよ」
護衛をつけてくれるのであれば、レイピアも所持していることだし問題はないだろうと、カムルは、サルバトーレに告げた。
「しかし……お前のその腹に居るのは我の世継ぎぞ。それを忘れるな」
「命に変えてお守りしますよ」
カムルはサルバトーレへ騎士の礼をおこなうと、自分の下腹部をゆっくりと撫でた。
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