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第19話
初めて触れた航の舌は、驚くほど熱かった。合わさった箇所から溶けてしまいそうな感覚に、穂高は目を眇める。普段は性的なこととは無縁に見える航が、必死に自分を求めている。自分から舌を絡ませ、穂高の唾液を啜り、もっと、もっとと顎まで突き出して。
航に深い口付けの経験がないことを、穂高は知っていた。軽いものなら自分が勝手に奪ったことはあるけれど、こうして舌と舌を絡ませ合うキスはお互いに初めてだ。
荒々しく、技量の少ないキスに頭がくらくらする。力任せに進めようとする航の強引さが、穂高をより興奮させる。
「……ッ、航。待って、ま……っ」
「いやだ、やっ……ん、ほだか。穂高もっと。はっ……ふ、ぅ」
零れた唾液が航の喉を流れ落ちていく。航の口内は二人の蜜で溢れ、その許容を超えていた。けれど肌が濡れるのすら厭わないほど、他のことに意識が回らない。
「穂高、ほだかぁ……んんっ、ん……ぅ」
穂高の肌にかかる吐息。その熱を感じないぐらい、穂高も昂っていく。理性と欲望の狭間で、なんとか耐え忍ぶ穂高を、航引きずり込もうとしていた。
伸ばした手で縋って、早く早くとせがむ。
「航、待って」
「無理、穂高、俺もう無理っ」
「わかってるから。俺が助けてあげるから、少しだけ言うことを聞いて。航ならできるね?」
コクン、と素直に頷いた航の額に穂高はキスを落とした。航は欲しいのはそこじゃないと文句を言ったけれど、穂高は後で、と軽く諫める。
一旦身体を離し、パーカーを脱いだ穂高は、それを航に着せてやる。万が一誰かに見られた場合、せめて航の裸だけは守らなければいけない。
それを見てもいいのは、この世で自分だけなのだから。
「航。お待たせ」
「んっ、これ……穂高の服だ」
穂高の匂いに包まれた航は、少しだけ長い袖口で口元を覆った。前までは自分と同じサイズの服を着ていたはずなのに、いつの間にか穂高の方が大きいものを着るようになった。
それは穂高が航より成長した証拠だ。もう穂高は、航に守られるだけの存在ではない。
まるで穂高に守られている気になった航は、くんくんと鼻を鳴らして穂高の香りを身体いっぱいに取り込む。洗剤の匂いと穂高自身のそれが、とても心地良い。
「穂高の匂いがする……俺、この匂い好き」
「……航」
「匂いだけじゃない。穂高の声も、顔も、その指も全部好き。だからもっと触って。俺に触って、穂高」
穂高の手をとった航は、それを着ていたシャツの裾から中へと誘った。素肌とは思えないほど熱を帯びたそれに、穂高の理性の糸が、また一本ぷつりと切れる。
「穂高、いっぱい触って……あっ、ん……こことか、むずむずする、から」
立ったまま向かい合う二人の距離は近く、今にも触れそうな航の唇が囁く。薄いシャツの中に隠された乳首が、むずむずと疼くと航が言う。
「……ほんと、いい加減にしてほしいんだけど」
言葉とは裏腹に笑った穂高は、もう一度航にキスをした。始まりから濃厚な口付けに、のけ反った航の後頭部が壁と擦れる。けれど、その軽い痛みすら航には快感になった。
乳首を転がして、時々抓って。いやらしく膨らんだそれを潰せば、航の腰が跳ねる。
「ああっ……穂高、そこダメ、穂高ダメ。ちくび、変なる……んっ」
「変って、どんな風に?なぁ、航の乳首っていつもこんなに硬いの?すごく、こりこりしてる」
「違うっ!それは穂高が……穂高が触るから、アッ……ああっ」
「航が言ったんだよ。ここを触ってって。こうして抓って、苛めてほしいって航が俺に言ったんだ」
大胆にシャツを捲り上げた穂高は、外気に晒された航の乳首を凝視する。そして、赤く尖ったその頂に唇を寄せた。軽く舐め上げただけで、航は悲鳴を上げた。
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