22 / 28

第22話

 こんなはずじゃなかった。穂高はそう思う。けれど、それと同じぐらいにこんな始まりで良かった気もする。  日頃ミチオにどれほど強気で語ってはいても、いざ航を目の前にすると穂高は二の足を踏んでしまう。  本当のことを言う勇気はないくせに、嘘を貫き通す自信もない。最期の瞬間まで騙し続けてやるなんて宣言は、自分に対する言い聞かせでしかない。  だからこそ穂高にとって今の状況は、天からの恩恵のように思えた。卑怯で狡猾で、臆病な自分に神様が間違いの恵みを与えてくれたのだと。  神様が間違いに気づく前に、早く済ませなければ。そう思った穂高は、衝動に駆られるまま手を進めた。  たとえ愛しい人が正気を失っていたとしても。  たとえ愛しい人が求めるのが、本当は誰でも良かったとしても。  身体だけでも航が手に入れば。一時の快楽だけでも知ることができたら。それだけでもう、穂高は幸せだと思えるだろう。 「航、全部脱がすよ」  大胆にも航の下半身を丸裸にした穂高は、その身体を反転させて壁に手をつかせる。そして背後から見下ろす航の身体に、感嘆の息を零した。  素肌に自分のパーカをまとい、大事なところを晒して。一番危ないのは自分だと言うのに、そんな無防備な姿を見せるなんて……オメガの発情期に穂高は感謝する。 「航、足を開いて。もっとこっちにお尻を突き出して」 「え……あっ、こ……こんな感じ?」  何も分からないまま従った航は、穂高に自身の尻を差し出した。微かに触れる穂高の熱にも気づかず、自分がこの後どうなるかも考えずに。 「穂高、なんか……この格好、恥ずかしい」 「そう?俺は航の全部が見えて最高だけど。ほら、こうして簡単に航の好きなトコロに手が届くし」  唐突に穂高の指が航の尾骨に触れる。そっと肌に乗せたそれを骨のラインに沿って下へ滑らせると、今度は両手で航の尻臀を包んだ。  穂高の手が左右にそれを開く。くぱ、と卑猥な音を奏で、航の秘められた後孔が穂高の目の前に現れた。 「やっ……なに。穂高、何して」 「凄いな……初めてなのに。ここにはまだ触れてもいないのに、もうグズグズ」 「穂高っ、そんなとこ見るな!やめろ!」 「やめない。もう止められるわけがないだろ?航だって本当は止めてほしいだなんて思っていないくせに」  左右の尻を大きく、円を描くようにして穂高は揉む。すると航の後孔は穂高の手の動きに合わせて形を変える。けれどその入り口はずっと開いたままだ。  微弱に震えながらも、早く来てと誘う蕾。指一本が入るか入らないかの隙間を開け、そこから蜜を垂らしていた。  誘われるがまま、穂高は指先を航の中に埋めた。

ともだちにシェアしよう!