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第24話

「ほだっ……はぁっ……穂高、穂高まっ……て、待って」  航の嬌声を聞きながら穂高は宙を振り仰いだ。青く広がるその清さに、自分の汚れを思い知る。  こうして自我を忘れた航を、好き勝手にする自分。いつも航を騙して、それを隠すために嘘を吐いて、肝心なことでさえ偽らないと叶えられない。  自分と相反する空に涙が込み上げてきて、強く目を閉ざした。 「航、力……っ、緩めてくれなきゃ入らない」 「無理、む、りっ……は、やぁっ、やッ……ふぁ」 「もっと奥まで欲しくない?航の中は、もっと……欲しいって俺のに吸いついてくる……っ、けど」  貫いた中のあまりの熱さに穂高は吐息を零す。航を揶揄することでなんとか快感を逃し、今すぐにでも突き破ろうとする自身を抑えた。  こうでもしないと、何をしでかすか自分でもわからない。 「航。こうして手前を擦られるのと……っン…中を突かれるの、どっちが好き?」  強引に奥へと押し入り、まだ硬さの残る奥を穂高が突く。すると航のものから微かに飛沫が飛び、それは地面へと吸い込まれた。もう吐き出すものに粘り気はない。 「わかんな……ッ、ぜんぶ、気持ちぃ……からぁっ」 「全部?全部って、例えば?」 「ぜんっ……ぶ、気持ちいッ、穂高ぁ……気持ちい、よ」 「うん、俺も。俺もすっごく…イイよ、航」  穂高は航の腰を掴み、思いきり突き上げる。角度をつけて最奥を突けば、航は身体をのけ反らせて喜んだ。その背の骨に沿って現れた窪みを、穂高は舌先で辿る。  つ……と、舐め上げられた箇所が冷たい。穂高と繋がっているところも身体も、熱くて熱くて仕方がないのに、舐められたところは冷たくて気持ちがいい。  熱いのも冷たいのも、何もかもが気持ちイイ。 「アッ、穂高……もっと、舐めて。もっと、もっと」 「ふ、はっ……駄目だろ、航。自分を犯してる相手に、可愛いおねだりなんかしちゃ」  ──つけ込まれても文句は言えないよ、こんな風に。  そう低く囁いたかと思えば、穂高は航の背中に噛みついた。微かに航が唸るほど激しく。まるで自分の中の荒ぶる感情を、航に分け与えるように。 「ああっ……やッ、そん、噛んじゃやだっ」 「はあ。きっつ……こんなに締めつけられたら、俺までおかしくなりそう」  不安定な体勢では、あまり激しく動くことはできない。けれどお互いに本能で求めあっているからか、技術よりも勢いが先行する。  身体と身体をぶつけて。もっとと求められれば、どちらもそれに応えて。  反応がいいところを穂高が攻めれば、航はそれに応じて啼く。普段からは考えられない甘い声を上げ、穂高の名前を呼んで悦ぶ。  次第に限界が近づいて来た二人の口数が減る。相変わらず航は矯声を零していたけれど、それも嗚咽の方が増えてきた。 「航……航、わたる。俺の航……ハァ……ッ、このまま出す、よ」  航の奥の奥。種を受け入れるための入り口に、穂高の切っ先が届く。注がれるのを期待して口を開いて待っているそこ。  発情期におけるオメガの妊娠率は、かなり高いと聞く。もし自分がここに注げば航は子供を孕むのだろうか……頭の奥の方で穂高は想像した。  自分の子供を孕んだ航を。驚いた後に喜ぶのか、それとも怒るのか泣くのか。きっと、航がどんな反応をしても自分は喜ぶのだろう。穂高 そう思う。  たとえ泣かれても怒られても。最低だと詰られ、嘘つきと見限られてもいい。  そうなれば囲えばいいだけのことだ。 「どうせ噛むなら……ッ、ここにすれば良かった」  航の腰を支えていた手を、穂高は首元へと移す。崩壊した理性の中でも首筋を噛まなかったのは、最後の足掻きだった。  いつの日か航の意思で自分を選んでほしい。航の運命の相手に、航から求められる形でなりたい。穂高の目から、ぽとりと一粒の涙が零れた。  穂高にとって最も清いのは、青空ではなく航自身だ。

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