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第27話
『俺、航のことが好きだ』
ストレートな穂高の言葉に航は一瞬黙りこむ。かと思えば満面の笑みを浮かべ、穂高の手をとった。目一杯の力でそれを包み込み、喜びを隠さない。
穂高は自分の勝利を確信した。
「航……!!!」
遠回りしたけれど、やっと航へと届いた思い。まだまだ言っていないことは多いけれど、これから順に告げていけばいい。航を傷つけるかもしれないし、怒らせるかもしれない。
それでも穂高はこの手を放す気はなく、航との輝かしい未来に胸を膨らませる。
あわよくば、このまま今度は両想い記念のセックスを……と、思ったのだけれど。
──思ったの、だけれど。
「穂高は本当に天使だよな!俺のことを思って、俺に気を使わせないようにそんなことを言ってくれるなんて!」
「…………ア?」
「俺、これからは穂高の為にもっと頑張るから!!穂高をちゃんと守れるように、しっかりするから!」
「いや、待って。航、ちょっと待てって」
「もし今度またあんなことが起こったら、穂高に頼るかもしれないけど……でも、そんなことにならないように、俺も気を付ける」
「いやいやいや……なんでそうなるんだよ……」
自分なりに単刀直入に告げた告白が華麗にスルーされ、穂高は頭を垂れた。早く航の誤解を解こうと思うのに、良い言葉が思いつかない。
ストレートでわかりやすく、且つあまり重たくない言葉。素のままの自分なら「お前が犯したいほど好きだ」と言うことができるのに、穂高君モードだとそんなことは絶対に言えない。
言った途端に別の問題での暴露大会が始まってしまう。
「アー……マジか…………これはさすがに……予想外すぎて笑えねぇ」
両こぶしを握り締め、決意を新たにする航を見て、穂高はベッドへと突っ伏す。この手には発情していた時の航の熱が残っている気がするのに、もうあの時の航はいない。
あるのはキラキラと輝く笑顔。それは穂高を想っての笑顔で、航に他意はない。ただ純粋に穂高の為に、穂高のことを守りたいが故の決意だ。
「いや、まあ……いいんだけどさ。もう少しこのままでも」
航の身体が手に入ったことで少し余裕ができた穂高は、自分自身に言い聞かせた。まだ穂高自身も全てを告げる勇気はなく、もう少しだけ今の状況に甘えていたい気持ちもある。
あと少し。徐々に航に教えていけばいい。
絶対に逃げられないって。気づいた時には身も心も穂高のものになっていて、逃げようだなんて考える余裕すらないって。
「これからもよろしくな、穂高」
誓いを立て終えたらしい航が項垂れている穂高の頭を撫でた。穂高が顔を上げた先には、やはり笑っている航がいる。
ああ、どうしようもなく航が好きだ。
言葉に乗せることのできない想いを穂高は指先に込める。それを精一杯に伸ばして触れるのは、航の首筋。
まだ何の後もないそこに記すのは、自分の名前。
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