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第56話:棒を掲げるブルドッグ6

「あ――」 ミネラルウォーターで濡れた唇で、いきなり口を塞がれる。 ひんやりした舌が、僕の想いを暴くように唇の隙間をなぞった。 「お前は俺をどうしたいわけ? そんな健気なことされたら、お前のこと一瞬も手放せなくなる……」 キスをしながら、ソファの背に体を押しつけられる。 明るい光の中で、シャツのおなかのところから中をまさぐられた。 「あっ……」 口の中でだんだんと熱くなってきた舌が、一旦離れ、シャツを捲った胸元に落とされる。 「やっ、何するんですか……」 「またミズキを、泣かせるようなことがしたい」 「……っ……」 「好きだから」 立ち上がった胸の先を、優しく甘噛みされた。 「や、あっ……」 「その声、やっぱいいな。お前の体、ちゃんと俺のこと覚えてる?」 目の前の彼を、内側に深く受け止めた夜が脳裏を駆け巡った。 体はきつかったはずなのに、甘い吐息と囁かれた言葉を思い出すと、全身が痺れるような熱を持つ。 「ここ、想像しただけで硬くなってる」 昂ぶってしまった僕の雄の部分を目ざとく見つけ、相楽さんが左手でそれをとらえた。 スエットの上から触られただけなのに、涙があふれるような快感に襲われる。 「やだ……」 「それ、本気で言ってる?」 耳元で囁かれると、取り繕う余裕もなくなる。 「やじゃないです、本当は……触ってほしい」 自分から彼の手のひらに押しつける。 「こら……煽るなって」 相楽さんは笑いながら、僕の猛りを取り出した。 朝のリビングで恥ずかしい部分を晒しているこの状況に、耳の奥が熱くなる。 相楽さんの左手が、僕を丁寧にしごき始める。 その手の動きを目の端で追いつつ、僕は彼のもう片方の手を引き寄せた。 「どうした?」 「こっちの手も、好きなんです」 ペンキがこびりついた右手の人差し指を、深く口に含む。 彼の手が驚いたように震えた。 僕はそのことを直に感じながら指を吸う。 「……っ、ミズキ」 相楽さんが、熱っぽい声で名前を呼んだ。 人差し指の形を舌で確かめ、中指の長さをのどで測る。 時々戸惑ったように強ばるその手が、苦しいくらいに愛おしい。 指をくわえたまままぶたを開けると、潤んだ瞳で僕を見ている彼と目が合った。 と、口から指を引き抜かれ、代わりに舌をねじ込まれる。 「んんっ」 唾液でベトベトに濡れた右手の指は、僕のひざの裏側をくぐって後孔を撫でた。 膝下に引っかかったままだった下着とスエットを脱がされ、下半身を裸にされる。 「お前にこの指をねじ込むのは怖かったけど、この際だからやってみる」 「え……?」 「ミズキはそのまま、エロいことでも考えてろ」 「今の状況以上にエロいことなんて、思い浮かびませんけど……」 そう答えると、相楽さんは恥ずかしげに笑った。 「だったら……俺のここでも触ってなさい」 彼は片手で器用に下を脱ぎ、硬くなったものを僕の手のひらに押しつけた。 「とても男同士で、昼間からすることとは思えませんね」 「お前な、そうやって途中で冷静になるのはやめろよ」 「だって……」 冷静なことを言ってしまうのは、今の状況が気恥ずかしいからだ。 「ああっ……」 僕の言い訳を待たずに、相楽さんの2本の指が後ろに侵入してくる。 「……っ、1本ずつじゃないんですか」 「もう、余裕で入った」 「嘘だ……」 指の関節の硬さを内側に感じ、息が詰まる。 「息しろ、力抜け」 言われるままに呼吸を繰り返すと、ゆっくりと中を掻き回された。 「ミズキの気持ちいとこ、どこだ……左手なら見つけられたのにな」 いじられているところより先に、胸が熱くなる。 「全部、いいです……」 「痛いんじゃないのかよ!」 「相楽さんがしてくれることは、全部嬉しい」 「……っ、お前な」 手元を見ていた彼の視線が、熱っぽさを帯びてこちらを向いた。 「そんなこと言われたら、俺の方が我慢できなくなるだろ」 絡まり合った体がソファからずり落ち、僕たちはフローリングに敷いたセンターラグの上でキスをした。 その間も2本の腕は、お互いの気持ちいい場所を探り合う。 さっきから握っている相楽さんの猛りが、明らかに硬度を増している。 半年前、これを受け止めた時の痛みと衝撃を思い出す。 痛いのは分かっている、それなのに僕は自分から彼を入り口へと導いた。

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