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第28話

 三日間の休日をどう過ごすかでまず揉めた。  弘人は引きこもりの本領を発揮して三日間ひたすら家の中でいちゃつく希望を出して湊を呆れさせたし、湊は湊で地元の夏祭りに久しぶりに参加して久しく会っていない友人たちと会いたいなどと空気を無視した発言をして弘人からの不興をがっぽり買った。 「大体さあ、何でここで友達? 友達取んの、俺より。三日だよ。三日しかないんだよ?」 「まあね、お前の言いたいことは分かる。俺だって何でここであいつらの顔が浮かんだのか疑問だ。けど思い出したら会いたくなるだろ? それが人情ってもんじゃないの」 「兄さん、最近任侠モノ見たでしょ」 「いい映画だった」  こっくり頷いた湊をちらりと見て弘人はハンドルに突っ伏した。帰省ラッシュの渋滞はなかなか進まない。 「選りによってこんなタイミングで情とか湧かさないでよ……俺への情はどうしたんだよ、枯れたんか。休み終わったらしばらく会えなくなるってのに……」  映画だとか本だとかに案外感化されやすい兄が伏せた頭をぺんぺん叩いてくる。二台分ほど開いた車間をのろのろ埋めて、また止まる。  そうしながら特大の溜息をついたって許されるはずだ。 「それに夏祭りって、祭りで友達と会うってことでしょ? その間俺はどうしてたらいいの。一人射的とかしてたらいいの。金魚とかめっちゃ掬ってたらいいの」  楽しげな周りから浮いて一人寂しく背中を丸める自分が見える。湊にも見えたらしく、何とも微妙な顔で咳払いされた。 「お前、その……友達、とか、いないの?」 「何そのぎこちなさ。腫れ物扱いやめてもらえます? 友達の一人や二人俺だっていますけど?」 「じゃあさ、お前も友達呼んだり……とか」 「……あーっそう」  目が据わる。低い声に湊がちらりとこちらを見た。悪いことしたなあ謝ろうかなあでもなあという葛藤が珍しく露わになっている兄の顔を見て、弘人はじとっとした眼のまま唇を尖らせた。 「一応げーのーじんなので? 色んな意味でモテるんですよね、あなたの弟さんは。一声かけたら老若男女どこからともなくわさわさとね。祭りなんてそっちのけでね。三日間まるっと潰れる勢いでオトモダチが騒いでくれるでしょーけど、どうしますお兄さん」 「……」 「女の子もたっっっくさん来るだろうなあ。そういえば俺、可愛い系の男の子にもわりとモテるんだよねえ」 「………」 「恋人より友達を取るような薄情な彼氏のおかげで、酒と女と男に寂しさを紛らわせてもらっちゃったりなんかしちゃったりするかもねえ」 「…………」 「一声かけちゃいましょうか、俺すでに寂しいしね。どうしましょうか、ダーリン」 「……俺が悪かったよ、ダーリン。機嫌を直して酒と花火買って俺たちの家に帰ろう」  勝った。  ぐっと握り拳を突き上げた弘人と、敗北を噛み締めてシートに深く体を預けた湊。  普段の彼らを知る第三者には見せられないアホっぷりがダダ漏れの小競り合いを経て、ようやく三日間の方針が固まったのだった。

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