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第19話運命の人11

翔太は別荘に一人残っている。 城へ連れていくと譲らなかったアデルに、頑として首を縦に降らなかったからだ。 理由は二つある。一つ目は、身体中に痣があること。キスマークと言えば聞こえがいいが、アデルの吸引力が半端ないのである。恥ずかしくてキノにも見せられない。自分がアデルのものになったことに慣れなくて、平常心を保てるか自信がなかったのもある。 二つ目は、胸からお腹にかけて別の大きな痣があることだ。前者の痣とは色も形も違う。アデルの毛と同じゴールドとブルーの二色で、剣に似た幾何学模様であった。 『我が一族は、一生添い遂げると決めた相手に、誓いの意味を込めて首筋を噛むという習慣がある』 そう言って、最後の交わりの際に、アデルが翔太の首筋を噛んだ。痛みしか感じなかった翔太が半泣き状態でいたところ、紋章が身体に浮かび上がってきたのである。透き通った色はまるで翔太のようだと、王族の紋章に感嘆の声を漏らした。 これを見たアデルが今度は離れたくないと駄々を捏ね始めた。だが、事情を聞いた翔太は、絶対に居なくならないことを約束して、アデルを出発させる。 それに、青い花を探す必要が無くなったから、もう逃げることはない。 憑き物が取れたように、身体が元に戻った。これはアデルの言う『番』になったからだろう。昨晩の交わりによる外傷以外は元気だ。心も全快した。 行き場の無い熱い想いは、全てアデルが飲み込んでくれた。異世界にいる自分自身をようやく受け入れることが出来た気がする。 ベッドルームから台所へ行く。翔太は昨晩から何も食べていなかった。 「何もない……腹減った……カップラーメンはこの世界に無いか」 使っていない別荘には、食べるものが何も無い。非常食すら置いていない。 翔太は、膝を抱えて座り込んだ。 それでも、気持ちは満たされているから、悲観的にはならない。 (アデル……帰ってこないかな) 晩餐会の途中で飛び出してきたと聞いた。あらゆることを中断して、俺を探しに来てくれたのに、一番気になる婚約者のことは、怖くて触れることができなかった。 慌ただしくアデルが戻ったのは、夜半すぎだった。

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