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第6話 友情

「燈!おはよう!」 「おはよう…」 僕が車から降りると、大輝が笑顔で駆け寄って来た。 入学式から2週間が過ぎて、毎朝この坂の下から教室まで一緒に向かっている。 大輝は運転席の蒼一朗に軽く会釈をすると、「行こうぜ」と僕の背中をそっと押して歩き出した。 入学式の次の日、坂の下まで蒼一朗に送ってもらって車から降りると、大輝が道の端でスマホを見ていた。 誰かと待ち合わせでもしてるんだろうと、車が動き出してから坂道を登り始めると、「おはよう!」と僕の横に並んで歩き出した。 「誰か待ってたんじゃないの?」 「燈を待ってたんだ!ここで待ってたら絶対通るだろ?」 僕が尋ねると、大輝が照れくさそうに笑いながら言う。そして、車が走り去った方をチラリと見て、 「今日は車だったの?」と聞いてくる。 「朝は車で送ってもらってる。電車だと混むし酔いやすいから…」 「そうなんだ。帰りも車?」 「帰りは朝ほど混まないだろうから電車だよ」 「じゃあ今日は一緒に帰ろう!」 大輝が、満面の笑顔で僕の顔を上から覗き込んできた。 適当な断る理由が思い付かなかった僕は、渋々「うん…」と頷いた。

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