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第8話 友情

ゴールデンウィークに入って、本当に大輝は僕のマンションに遊びに来た。 リビングのソファーに座ってもらい、大輝が手土産に持って来た、駅前の美味しいと評判の店のシュークリームと紅茶をローテーブルに並べて隣に座る。 「今日は燈のお兄さんいないの?」 シュークリームのクリームを口の端に付けたまま大輝が聞いてくる。 「お兄さん?」 「ほら、いつも朝に車で送って来る人だよ!」 「ああ、蒼のこと?彼は僕の兄じゃないよ…。」 僕と蒼一朗の関係は、言葉で説明出来るようなものではないんだ…。 だから僕は「彼は巽蒼一朗(たつみそういちろう)と言って、僕の遠い親戚だ」と話した。 大輝は「ふーん、そうなんだ」とそれ以上突っ込んでは聞いて来なかった。 「大輝は部活に入ったりしないの?」 口の端のクリームを指摘しながらティッシュの箱を渡す。 蒼一朗と変わらないぐらい身長が高く、体育の着替えの時にチラッと見えた体は程良く筋肉が付いていて運動神経も良さそうだ。そんな大輝を何となく勿体無く思っていたんだ。 「俺さ、中学の時は3年間バスケをみっちりやってたんだ。だから高校では部活はもういいや、と思って。それに男子高に来てて何だけど、合コンして彼女作って楽しい高校生活を送る予定だったんだ」 大輝は慌てて口をティッシュで拭きながら、頭をかいて照れ臭そうに話した。 「じゃあ僕とばかり居たら駄目じゃない?」 大輝の目を見て首を傾げる。 大輝は、目を逸らして首の後ろに手をやった。何だか耳が赤い。 「うん…、入学する前はそう思ってたんだ…、でも入学式の日、桜の下で燈を見てからそんな事、もうどうでもよくなった」 そう言うと、僕へと視線を戻して急に真剣な表情になった。 「今の俺の一番は燈なの!だからもっと色々話したりいろんな所に出掛けたい!という事で、ゴールデンウィークの他の空いてる日に一緒に出掛けない?」 「え…?うん…」 言ってしまってから「あっ」と焦ったが、大輝が目をキラキラさせて、「ホントに⁉︎やったぁー!」とすごく喜ぶからまた断れなくなってしまった。 それと、大輝が、僕のことを俺の一番とか言ってたけど、きっと何か勘違いしてるんだろう。

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