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第10話 監視する者
「先生っ、体育でサッカーの試合見てる時に倒れてっ」
大輝が僕の腰に回した腕に力を込めて、焦った声で説明をする。
白衣の先生は、僕に目線を合わせて「名前は?」と聞いてきた。
「成瀬です…」
あぁ、早く倒れてしまいたいのに…。口を開くのも億劫で、俯いて目を瞑る。
「燈⁉︎せんせっ、燈を寝かせてもいいですかっ?」
「そうだね、窓側のベッドに座ってちょっと待っててくれる?」
大輝が僕をベッドに座らせて背中を支えてくれた。
先生がタオルに包んだ氷枕と、水を入れたコップを持って傍に来る。コップを僕に持たせて、僕の頰から首にかけて撫でるように手を滑らせる。その手の冷たい感触に、ゾクリと肌が粟立った。
「熱いね…、熱中症だね。水を飲んでこれで冷やせばすぐに良くなるよ。」
「ありがとうございます…」
手に持った水をゴクゴクと飲み干す。そんな僕をじっと見つめる眼鏡の奥の目に、微かな不安がじわりと胸の中に浸透していく。
大輝が氷枕をベッドに置いて、僕を寝かせてくれた。
「君は授業に戻りなさい。あと2つ授業を受けたら昼休みになる。心配ならその時に来なさい」
「わかりました…」と大輝は渋々といった感じで返事をして、こちらを気にしながら出て行った。
僕はさっき感じた不安が何なのか気になったけど、沈んでいく意識に逆らえず、そっと瞼を閉じたーー。
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