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第15話 狂愛

先生がベッドから離れてドアへ行き、鍵を開けて振り返った。 「そうそう、君が寝てる間に担任の先生に早退する事、伝えておいたよ。君の鞄が届いたら、車で送ってあげるよ」 「……別にいいです」 僕は俯いたまま答える。 「だって歩けないだろ?」と先生が楽しそうに言う。 その時、昼休みを告げるチャイムが鳴った。 すぐに、廊下をパタパタと走る足音が聞こえ、「失礼しますっ」と言うと同時に、ドアがバンッと勢いよく開く。 「燈!大丈夫⁉︎」 鞄を持った大輝が僕の下へ駆け寄ってくる。顔を上げて大輝と目が合った瞬間、ぎゅうと心臓が掴まれたみたいに苦しくなった。 大輝の顏が見れなくて、僕はまた俯いてしまう。なぜか僕を大輝に見せたくないと思ってしまう。…だって、僕は汚いから…。 「どうしたの?まだ気分が悪い?」 大輝が、僕の前で腰をかがめて顏を覗き込んでくる。僕に触れてこようとする手に、身体を硬くする。 その時、また誰かの走る足音と、「走らないで下さいっ!」と叫ぶ声が聞こえた。大輝が動きを止めて振り返り、僕もつられてドアへ目を向ける。 すぐにドアから蒼一朗が姿を現わした。息を切らして、僕の下へと駆け寄る。 僕は、蒼一朗が来てくれた事に嬉しくなって、彼へと手を伸ばした。 「蒼…そう…っ…」 蒼一朗を呼ぶ僕を見て、困惑した顔の大輝が身体を起こしてそっと離れた。 蒼一朗は僕の前に来ると、ふわりと優しく抱きしめた。右手で僕の背中を撫でながら、少し眉間にしわを寄せる。 ーー蒼…気がついた…? 蒼一朗は、一瞬動きを止めた後、僕の尻の下に腕を差し入れて抱きかかえた。僕は、蒼一朗の首に腕を巻き付けて「早く連れて帰って…蒼…」と呟き肩に顔を埋めた。 蒼一朗は、隣にいた大輝に「それ、燈のかな?」と尋ねると、大輝が「あ、はい、そうですっ。制服も入ってます」と言って、鞄を差し出した。 「ありがとう」 鞄を受け取って肩にかけ、蒼一朗の後から入って来た担任の先生に挨拶をする。 「ご連絡、ありがとうございました。燈を連れて帰ります。失礼します」 蒼一朗はそう言って、担任の先生に軽く頭を下げると、保健の先生を一瞥してドアに向かう。 ドアを出る時にそっと顔を上げると、こちらを見つめる大輝と目が合った。僕はドキリとして、慌てて蒼一朗の肩に顏を埋めた。

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