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第21話 苦悶
休みの間、眠ると悪夢を見て僕が震えるから、ずっと蒼一朗が抱きしめてくれていた。
まるで、出会った頃に戻ったみたいだった。
週明け、いつものように坂の手前で大輝が僕を待っていた。車から降りる僕を見て、駆け寄って来る。
「おはよう!もう大丈夫?心配したよ?」
「うん…大丈夫…」
僕はそう言って、目を逸らして俯く。
「そう…?まだ元気がないみたいけど……」
そう言って、大輝の手が僕の背中に触れた。ピクリと肩が跳ねてしまい、それを誤魔化すように、「早く行こう」と歩き出した。
大輝はまだ心配そうな顔をしていたけど、僕が歩き出したから、車の中の蒼一朗へ会釈をしてから慌てて後をついてきた。
歩く間、僕がずっと俯いて頷くしかしないから、大輝は困っていたようだ。
だって、僕もどうすればいいかわからなくて困ってるんだ……。
下駄箱で靴を履き替えて廊下を歩いていると、背中から声をかけられた。
「おはよう成瀬くん。具合はどうかな」
振り返ると、白衣を着た先生がポケットに手を入れて立っていた。
「おはようございます……もう大丈夫です…」
小さな声でそれだけ言うと、僕は身体を戻して歩き出そうとする。だけど先生に、「ちょっといいかな」と腕を掴まれた。
「何ですか…?」
「話があるんだよ。いいから来なさい。君は先に教室行ってて」
大輝に向かってそう言うと、僕の腕を引っ張って行こうとする。
「行くから離して」と、僕は腕を振って先生の手を解いた。
大輝が不安そうにこちらを見てくるから、僕は先生に顏を向けたまま「後から行くから」と言って、先生の後についてその場を離れた。
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