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第22話 苦悶

先生が連れて来たのは、人通りの少ない階段裏だった。風が全く通らなくて蒸し暑い。 「話って何ですか?」 早く済ませたくて、少し言葉がきつくなる。 先生が苦笑しながら僕を見た。 「そんなに警戒しなくていいよ。今は何もしない。」 そう言いながら、僕の頰に手を伸ばしてきた。僕はその手から逃れるように顔を背ける。 「あの後、君の番犬くん、怒ってなかった?」 「番犬…?」 「そう、いつも君の傍にいる…巽蒼一朗…だっけ。すごい目で、俺のこと睨んでたよ」 先生が、笑いながら肩をすくめてみせた。 「…蒼のこと、知ってるの?」 「知ってる。彼、成瀬グループの中ではかなりやり手だからね。君の傍にいる為に、いろんな所で結果を出してるって話しだけど?」 僕は目線を逸らして下を向く。 「仕事のことは知らない……」 「ふーん?かなり頑張ってるようだよ。大事なお姫様の為だろうね。そのお姫様に手を出されて、さぞ腹を立ててたんじゃないかな」 「蒼が…何を考えてるかなんて……知らない…」 階段裏は蒸し暑くて、僕の頰に汗が伝う。 先生はまた手を伸ばして、指の背で僕の頰を伝う汗を拭った。 「ふっ、番犬くんは恐いけど君のことは気に入ってるから…。だから金曜日の放課後、保健室に来て。もう一人君にべったりのあの友達に、本当の君を知られたくないだろ?」 大輝のことを言われてピクリと肩が震えた。 そんな僕に気づいて先生はクスリと笑い、僕に顔を近づけてそっと唇を合わせた。

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