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第25話 苦悶
澤井先生の名前を知った日から、僕はほとんど毎日、昼休みを保健室で過ごすようになった。
大輝に「夏バテで気分が悪いから」と説明したら、一度、僕について来たんだけど、先生に「どこも悪くない人は来ないように」と言われて帰されていた。
澤井先生と過ごす時間が増えたけど、なぜか先生は、金曜日以外は僕を抱かなかった。てっきり好きなように僕の身体を使うのだろうと思っていたから、少し拍子抜けした。
「だってこの前、次の日休んだだろ?」
先生はそう言ったけど、あれは先生だけじゃないし……。
僕のこと、大輝の名前を出して脅したくせに変な所で気を使うんだ…と可笑しくなった。
先生は金曜日だけ僕を抱くけど、それ以外の時は、軽く抱きしめたりキスをしたり……。それがまるで恋人にするようで、とても滑稽に思えた。
昼休みは保健室に逃げることが出来ても、さすがに帰りまで大輝から離れる事は出来なかった。だって、大輝は何も悪くないんだから。
最近の僕の態度はすごく素っ気なくて感じ悪いのに、相変わらず大輝は、僕に明るくて優しい。僕を怒るんじゃなくて心配するんだ。
そんな陽だまりのような暖かさが心地良く思ってたんだけど。先生に抱かれて思い出したんだ。
ーー僕は汚い。
僕とは正反対の、清廉潔白という言葉が当てはまる大輝が隣にいると、僕の中の汚い黒いシミみたいなものが、大輝の方へ漂って行きそうで怖くなる。
でも、その暖かさが離れていくのは寂しいとも思ってしまう。
僕はもう、自分がどうしたいのか、どうすればいいのか、何も分からなくなってしまった。
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