35 / 89

第35話 蓮本 大輝

俺は新しい制服を着て、学校まで続く桜並木を見ていた。 今日から俺は高校生だ。紺のジャケットに深緑と黒のチェックのズボン、そして渋い赤に黒の細い線が斜めに入ったネクタイをする。中学は詰め襟だったから、なんだか大人になった気分で嬉しかった。 俺がこれから通う高校は、かなりレベルの高い進学校だ。本当は共学に行きたかったけど、希望する偏差値の学校がなかった。中学は部活と勉強ばかりだったから、女の子と遊びたかったのに…。でも、男子高にいても、合コンしまくって彼女を作るって決めたんだ。 俺は、これから始まる高校生活の事を考えて、ワクワクしながら坂道を登り始めた。 少し歩くと、立ち止まって桜が散るのを見ている生徒がいた。彼の綺麗な黒髪が、風に吹かれてサラサラと揺れている。なぜかその姿が気になって、彼の横に回ってそっと顔を覗き込んだ。 その瞬間、俺の周りの時間が止まった。 白い陶器のような滑らかな肌。大きな二重の目を縁取る長い睫毛。まっすぐ伸びた鼻筋。紅く色づく小さな唇。 俺は心をすべて持っていかれてしまった。 彼が俺に気付いてこちらに顔を向けた。目が合ってゆっくり首を傾げる。それを見た俺の心臓がドキンと跳ね、再び時間が動き出した。俺は一気に顔が熱くなって、早鐘のように鳴り響く心臓を抑えながら、慌ててそこから離れた。 学校に着いて、クラスを確認して教室に向かう。教室の自分の席に着いて、俺は溜息を吐いた。 さっきの俺の態度は感じ悪かったんじゃないか?じろじろ見たあげく、逃げちまった…。彼も新入生ぽかったけど……名前、なんていうんだろ……。 そんな事を考えてたら、彼が教室に入って来た。 同じクラスなんだ。しかも俺の斜め後ろの席に座った! 俺は嬉しくて、ドキドキしながら話しかけた。 「俺は蓮本大輝って言うんだ。大輝って呼んで。よろしくな!」

ともだちにシェアしよう!