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第36話 蓮本 大輝

彼の名前は〈成瀬燈〉と言った。あかり…。名前まで可愛い……。 俺は燈と仲良くなりたくて、いつも燈の傍にくっついていた。燈は困ったような顔をするけど、俺を邪険にしたりする事はなかった。 クラスメイトの誰かが、燈の事を怖くないか聞いてきたことがあったけど、「何言ってんだ?こいつ」と思った。 燈が怖いわけないだろ。あ、あれか?綺麗過ぎて怖いと言ってんのか?もしかして、こいつも燈のことが……。 俺の頭の中は燈の事で一杯で、クラスメイトが燈に挨拶してるのを見るだけで、胸の中がもやもやした。 いやいや…俺はクラスメイトと話したりするのに、燈が話すと嫌だ、って何だよ…。これって…独占欲ってやつ? だから、燈があまり他のクラスメイトと関わろうとしなくて、でも俺とは一緒に居て、少しだけど喋ってくれる事がとても嬉しかった。まあ実際は俺がいつも傍から離れず、うるさく喋ってたからなんだけど…。 週の半分は一緒に帰る約束をした。 一度、燈がどんな所に住んでるのか見たくて、家に帰る燈を送ると言って、付いて行った。我ながらストーカーかよ、と思ったけど、燈の事、全部が知りたかったんだ。 十階建てのまだ新しいマンションだった。マンションを知ってしまうと、今度は部屋を見たくなって、ゴールデンウィークに遊びに行く約束を強引に取り付けた。 燈は、ちょっと広めの作りの3LDKで、遠縁だと言う巽さんと二人で住んでいた。巽さんも綺麗な顔をしたイケメンだったから、俺は勝手にお兄さんだと思ってたんだけどね……。 両親はどうしたんだろう、と思ったけど、何か理由がありそうで聞けなかった。 俺が手土産に持ってきたシュークリームを小さい口で食べる燈が、もの凄く可愛かった。 それに、珍しく燈から俺の事を聞いてきてくれて舞い上がってしまい、思わず告白っぽい事を口走ってしまったけど、気付いてないのかな…。

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