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第37話 蓮本 大輝

ゴールデンウィークにもう一日、燈と一緒に出掛けた。 燈が好きそうな所を必死に探して見つけたブックカフェだ。前に本を読むのは好きだ、と聞いていたから。 燈は気に入ってくれたようで、長い時間、そこでのんびり過ごした。 俺も日頃あまり読まない本を読もうと手に取ったけど、静かに本を読んでる燈の姿に見惚れてしまって、ほとんど開いていない。 たまに燈が不審な顔で俺を見てたけど。でも俺は、燈と長い時間を過ごせて大満足だった。 制服が夏服になって、日に日に陽射しが強くなってきた。 夏服の燈は本当にヤバい…。真っ白な細い腕が半袖から伸びて、ボタンを一つ開けたシャツから覗く首元に、目が離せない。汗も少しはかいてるはずなのに、なぜか香水とは違ういい匂いもしてくる…。俺はこの夏、冷静でいられるのかな……。 燈は暑さに弱いらしく、ただでさえ食が細いのに益々食べれなくなってる。それにいつも青白い顔をしてて、俺はとても心配だった。 ある日の体育の授業中に、燈が倒れた。俺は慌てて燈を保健室に連れて行った。 燈が心配で仕方なかったけど、保健室の澤井先生に授業に戻るように言われて、渋々、保健室を後にした。先生の燈を見る目が嫌な感じがしたんだけど…気のせいだろうか? 俺は昼休みを告げるチャイムが鳴ると同時に教室を飛び出した。体育の授業の後に、担任から「成瀬が早退するから荷物を保健室に持って行ってやってくれ」と言われてたから、燈の鞄を持って廊下を走った。 保健室に駆け込むと、俺の顔を見た燈がすぐに目を伏せて俯いた。まだ気分が悪いのかと思い、燈の傍に行ってその華奢な身体に触れようとした時、また誰かが駆け込んで来た。振り向くと巽さんだった。 その時、燈がとても切ない声で巽さんを呼んだんだ。その声に、俺は思わず燈の傍から離れてしまった。 燈の声に応えるように、巽さんがそっと燈を抱きしめた。 誰も触れることが許されないような、そんな二人の姿に、俺は黙って見ている事しか出来なかった。

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