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第38話 蓮本 大輝
週明け、燈が倒れて以来に会うから、元気になったか気にしてたんだ。
朝、いつものように坂の下で待ってると、巽さんに送ってもらって燈が登校して来た。俺はほっとして燈に駆け寄った。俺より、頭一つ分低い燈の顔を覗き込むと、まだ辛そうな顔をしてる。いつにも増して口数も少ないし…。
下駄箱で靴を履き替えて教室に行こうとしたら、澤井先生が燈を呼び止めた。燈が嫌そうにしてるのに、無理矢理連れて行こうとするし。やっぱり、あの先生は気に入らない。なのに燈が、「昼休みは保健室で過ごす」って言い出した。
「夏バテが辛いから休みたい」
そう言われたら仕方がない。
俺も燈について保健室に行ったら、澤井先生に「君はずいぶん元気そうだね。だったら来ちゃ駄目だよ」と追い返された。
はっきり言う。俺はあの先生が嫌いだ。
それから燈は毎日、昼休みになると、保健室へ行った。
毎日行くもんだから、先生と燈がデキてるんじゃないか、と噂する奴が出てきた。
そんな話を聞いてると不安になって、こっそり保健室を覗きに行ってみたりした。
薄く、廊下に面した窓を開けると……。
燈が窓側のベッドに寝転んで、ぼんやり空を眺めていた。たまにポツリと、先生と他愛のない話をしたり。俺はほっとしながら、自分の情けない行動に苦笑いをした。
文化祭が近付き、準備作業が始まった。
部活のない俺達は、毎日放課後残って作業をする。
燈は言われた事を嫌な顔一つしないでやっていく。冷めてるようでいて、きっちりやるべき事をやる所も俺は好きなんだ。
でも、細い腕で重い物を持ったり、釘を打って綺麗な手が傷つかないか心配で、危険な事は全部俺が代わりにやった。
燈は困った顔をしてたけど、小さく「ありがとう」と言ってくれた。
最近、ちょっと避けられてる?なんて落ち込んでたけど、そんな一言で、俺の気分は一気に上昇してしまう。
それに、避けてる燈が嫌そうな顔じゃなく、辛そうな表情をしてたのも気になってたし……。
何でも俺に話してくれるようになったらいいのに…。俺はもっと燈の事を知りたいし、もっと燈の力になりたい。
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