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第39話 蓮本 大輝

文化祭の準備作業が続いた週の金曜日、四時間目の授業が終わった後に、「頭が痛くてしんどいから、午後の授業は休むって言っててくれる?」と燈が言い出した。 月曜からずっと放課後残って作業をしてたから、疲れが溜まってるのかもしれない。 熱がないかと伸ばした俺の手を避けるように席を立って、慌てて教室を出て行こうとする燈に声をかける。 「放課後迎えにいくね」 燈は微かに頷いて、教室を出て行った。 帰りのHRが終わると、俺はまた教室を飛び出して、保健室へと廊下を走った。 今日は、元気になったとしても燈を帰らせよう。巽さんが迎えに来れなかったら、俺が送って行こう。 そう思いながら燈の下へと急いだ。 廊下の角を曲がり、保健室まであと少しという所で「あかりっ‼︎」と叫ぶ声と、何かを落とす音が聞こえた。 え…?今のって澤井先生の声だよな?えっ?何?燈⁉︎ 俺は慌てて保健室の前まで駆け寄り、ドアを引こうとしたけど、何故か鍵がかかっていて、開かなかった。 「はあっ?なんで鍵かかってんの?せんせっ!いるんだろっ?燈っ、どうしたんだよ!開けろよ!!」 俺はドアをガンガン叩きながら怒鳴り続けた。 中からは、先生の「あかりっ、あかりっ!」と叫ぶ声がずっと聞こえてくる。 「だから早く開けろって!!」 俺はイライラして思いっきりドアを蹴飛ばした。 少しすると鍵を外す音がして、俺は勢いよくドアを開けた。先生を押し退け、中に入って目にしたのは……。 首に赤く染まったタオルを当てて、床に倒れている燈の姿だった。 「あ、かり…?あかりっ」 俺は燈の傍に駆け寄り跪く。 先生が真っ青な顔をして、机の上の受話器を取りながら言う。 「今救急車を呼ぶから、君は燈の頭を上げて首のタオルを押さえてて!」 俺は言われた通りに燈の頭を膝に乗せ、タオルを首に押し付ける。 これって…血?燈の?首から出てんの?なんで? ふと燈の手にカッターナイフが握られてるのに気付いた。血がべっとりと付いている。 なに?なんでこんなの持ってんの?なんで…? 俺は、燈の手に強く握られていたカッターナイフを、指を一本ずつ剥がして抜き取り、遠くに投げた。 燈の顔は恐ろしい程白く、押さえているタオルにじわじわと赤い色が広がっていく。俺はだんだんと恐くなって震え出した。 「…なあ、燈……やめてくれよ…どうしたんだよ…っ、あかりっ」 俺は、燈の手を強く握り締める。燈の白い顔に、俺の目から溢れ出た雫がポタポタと落ちた。 俺の涙で濡れた燈の顔は、出会ってから一番穏やかな顔をしてるように思えたーー。

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