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第48話 悲嘆
僕はガタガタと震え出した。指の関節が白くなるほど蒼一朗のシャツを強く握り締める。
「ぼ、僕は…生まれてきちゃ駄目だったの?…僕は汚いの?僕はいらないの?じゃあ…じゃあやっぱり僕も父さん母さんと一緒に死ねばよかったっ!」
ーー僕に生まれて来てくれてありがとうと言ってくれた二人。僕は宝物だよ、と笑ってくれた二人。僕を愛してくれた二人と一緒に!
僕は、大きく身体を震わせ涙で顔をぐちゃぐちゃにして叫んだ。
蒼一朗が、僕の震えを抑えるように強く抱きしめ、僕の頭を自分の胸に抱え込む。
「燈!燈っ!さっき言ったよな?俺はおまえの傍にいるって。俺はおまえが必要だ。俺はおまえに出会えて嬉しいんだ。それにおまえが汚いなんて思わない。だから、死ぬとか言うなっ!俺がこの先ずっと傍にいるからっ。頼むからそんな事言わないでくれ!」
僕を抱きしめる蒼一朗の身体も、僕と一緒に震えているようだった。
蒼一朗がそう言ってくれたけど、僕はやっぱり悲しくていろんな事が悲しくて、身体中の水分が無くなってしまうんじゃないか、と思うぐらい泣き続けた。
そして泣き疲れて蒼一朗の腕の中で、いつの間にか眠ってしまった。
目が覚めると、部屋の中は真っ暗だった。縁側の障子から仄かに灯りが漏れている。
僕は布団に寝かされていた。隣で蒼一朗が、僕の方を向いて寝転んで、右腕で頭を支え僕の顔を眺めていた。
左手の親指で僕の頰を優しく撫でる。
「起きたか…。頭痛くないか?今食事持って来るからもう少し寝てろ」
僕の頭を一つ撫でて部屋を出て行った。
僕はゆっくりと身体を起こす。いっぱい泣いたからか、頭がはっきりしない。ぼんやりとした頭で考えた。
お祖父さんに言われた言葉は、思い出すと心が潰されそうで消えてしまいたくなる。
でもその後に、蒼一朗が言ってくれた言葉が、お祖父さんの言葉を外から包んで隠してくれる気がした。
出会ってからそんなに経っていないのに、何故そこまで思ってくれるのか判らなかったけど、僕はもう、彼の言葉に縋るしかなかったんだ。
蒼一朗の、父さん母さんと似てるようで違う、僕を愛おしむ優しい目を思った。
僕は、蒼一朗が傍にいてくれる間は生きていけるかもしれない……。
この時から蒼一朗は、僕が生きていく為の理由になったんだ。
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