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第60話 歪な関係 ※
男の人は、顔を近付けて僕の乳首を舐めまわした。片方を舌で転がして、もう片方を指で何度も弾く。そして僕のズボンのベルトを外しながら、顔を下へと降ろしていく。ズボンと下着を脱がして、僕の性器をべろりとひと舐めした後、尻を両手で開いて孔を舌で突ついた。
唾液を孔の中に送り込むように舌を出し入れする。充分に濡らしてから、布団の近くに置いてあったボトルを手に取って、蓋を開けて掌にとろりとした液体を出した。それを指で掬って僕の後孔に塗りたくる。そして指を孔につぷん、と入れてきた。
「う…っ、んぅ… 、あっ」
異物を入れられて、痛くはないけれど圧迫感が気持ち悪くて、僕の口から声が漏れた。
彼は指を時折りぐるりと回しながら、僕の中を広げていく。しばらくそうした後、指を二本に増やしてパラパラと動かした。
僕は、固く目を閉じて蒼一朗を思い浮かべる。
蒼……蒼はどんなふうにしてくれる?…早く蒼に触れて欲しい……。
ぼんやりとしている間に指が三本に増やされ、僕の後孔から、ぬちゃぬちゃといやらしい音が聞こえてきた。
彼が指を抜いて僕の足を抱え、スラックスから勃起した性器を出して、後孔に押し付ける。
「挿れるよ…」
ぐっと腰を進められ、僕の中に異物が入ってくる。
「ん…っ、んぅ」
指で慣らされていたけど、痛みと圧迫感に吐きそうになる。苦しさに手と足の指にぎゅっと力が入った。
「あまり入らないね…」
彼はそう言って、ゆるゆると腰を動かし始めた。
え…?こんなに苦しいのに……全部じゃないの?
僕は気持ちいいなんて全く思わなくて、ただ早く終わることだけを願っていた。
「あっ…んっ…ん…っ」
狭い孔を開かれる苦しさに、意図せず声が出てしまう。
彼が僕の足を高く上げて、腰を打ち付ける動きを速くする。低く呻いたと思ったら腰を引いて、荒い息を吐きながら僕の腹に白濁を吐き出した。
彼がティッシュで僕にかけた白濁を拭き取ると、僕はゆっくり身体を起こして、脱ぎ捨ててあった下着と制服を身につけた。そして、のろのろと玄関へ行こうとする。
「もう帰るの?」
彼が、慌てて僕の腕を掴んできた。僕はその腕をそっと押しやる。
「課題がいっぱいあるんです…。早く帰ってやらないと…」
微かに微笑んでそう言うと、「そうか、残念だけど仕方ないね」と溜息を吐いて腕を離してくれた。
僕は、逸る気持ちを抑えて外に出る。迎えの車に乗り込むと、すぐに蒼一朗にメールを送った。
『今日、セックスしたよ。早く帰って来て』
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