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第64話 変化 ※
三人のうち、残りのもう一人は特殊な性癖の人で、縄で僕の全身を縛ってきた。その人は、縛られた僕を見てひどく興奮していた。僕の身体を眺めながら、自分で自分の性器を扱いて僕の身体に白濁をかけた。
僕はいつものように目を閉じて、蒼一朗を思い浮かべる。すると縛られた所がじんじんと熱を持ってきて、身体が揺れ、性器が主張を始めた。
彼が自身の白濁が付いた手で僕の性器を握って、上下に動かしてきた。僕の背中に手を回して、縄で縛られ、よりぴんと尖った乳首を吸ってくる。
頭の中で蒼一朗の手と舌を思い出した瞬間、僕は白濁を飛ばしていた。
終わった後に縄を解かれたら、意外と濃く痕が残っていた。
仕事から帰って来た蒼一朗が痕を見て、その人と、好きにさせた僕にも怒り出した。そして赤い痕全てに、丁寧に舌を這わせてキスを落としていった。
意外にも縛られた痕を見て、蒼一朗の他に僕に初めて触れた男の人も怒っていた。
「君の綺麗な肌にこんなに痕を残して…。許せないね」
僕のシャツの襟から覗く痕を、痛ましそうに撫でて言った。
彼もまた特殊な性癖を持つ、ペドフィリアだった。
中学二年になった僕には興奮しなくなっていて、この頃にはキスもセックスもしていなかった。
でも僕のことは好きだからと、時々話し相手として会っていたんだ。
「私にこんな事を言う資格もないんだけど…自分を大事にしないと駄目だよ…」
彼の言葉に目を伏せる。
だって仕方ないんだもの…。
更に彼は続けた。
「私は君の力になりたいと思ってるんだよ。何か望みはないかい?」
僕は黙って彼の目を見た。ずっと考えていた事がある。僕は、ゆっくりと口を開くと小さく声に出した。
「あの家を…成瀬の家を出たいです…。それが僕の望み…」
彼はじっと僕を見つめた後に、「わかった」と頷いた。
しばらく他愛のない話をした後、僕が帰ろうと立ち上がると、彼が腕を掴んで引き寄せそっと抱きしめてきた。
「君とは長い付き合いになるね…。楽しかったよ。私の名前は有本と言うんだ。忘れないでくれると嬉しい」
そう言うと、僕の身体を離して寂しそうに笑い、「早く行きなさい」と僕の肩を押して帰るように促した。
僕は、有本さんの言葉と態度が気になったけど、「じゃあまた…」と軽く頭を下げて別邸を後にした。
それから何故か、僕は別邸に呼ばれる回数が減っていって、中学三年になると行かなくていい事になった。
有本さんには、あの最後に会った日以来、会う事はなかった。
中学三年になってすぐに、祖父が数人の部下を連れて僕のいる離れの部屋に来た。蒼一朗はまだ帰ってなくて、僕が一人の時だった。
僕がこの家に来てから祖父の顔をまともに見るのは、二回目だ。前の時のように、部屋には入らず廊下から声をかけてきた。
「おまえはこの家を出たいそうだな。いいだろう、出させてやる。ただし、条件がある」
そう言って、僕の前に何かのパンフレットを投げてきた。
「その有名進学校に合格しろ。そこに合格出来たら出してやる。それと住む場所は成瀬が所有するマンションだ。家からは出してやるが自由にはさせない。常に見張りをつけるぞ。それが条件だ」
僕は、信じられない気持ちでパンフレットを見つめる。
「それと…」と祖父が続ける。
「ここを出たら巽とは離れてもらうぞ。あいつは中々に仕事が出来る。成瀬グループにとっても重要な人材だ。おまえに構っている暇などない。いいな」
祖父は言いたい事だけ述べると、さっさと離れを出て行った。
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