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第77話 先生と噂

夏休みが近い事もあり、結局、僕は一学期の残りは休む事になった。首の包帯が目立つし噂も広がってるから、注目を浴びて僕が心身共に疲れてしまうのが心配だ、と蒼一朗は言っていた。 人がどんな噂をしていても僕は気にしないのに…、と思ったけど、ゆっくりと休みたいとも思っていたから、長い期間、たくさんの人に会わなくて済むのは、少し嬉しかった。 大輝は三日に一回ぐらいは会いに来て、学校の事を色々と話してくれる。 僕と澤井先生の噂は、澤井先生が僕の事が好きで、無理矢理襲おうとしたのを僕が抵抗して怪我をした、っていう話になっていた。澤井先生もそれを認めて、校長先生に騒がせた事を謝り、学校を辞めたそうだ。 最初は無理矢理だったかもしれない…。でも後の方は、僕が自ら保健室に行ったんだ。なんで先生は、僕を庇うような事を言ったんだろう…。 蒼一朗に澤井先生の事を聞くと、祖父の会社も辞めたと言っていた。今はどこにいるのかもわからないらしい。 病院で、僕が大丈夫だと聞いた先生が、「よかった…」と呟いて涙を流していたと、蒼一朗から聞いた。 「それでもあいつは許せない」 と蒼一朗は怒っていたけど、もしかして母さんと僕が、彼の心にトラウマを植え付けてしまったのかもしれない。 母さんは、先生の事を憎んでたのかもしれないけど、僕は別に憎んでなどいなかった。だって、蒼一朗に抱いてもらう為に、僕も彼を利用したのだから。だから僕の事では、なにも苦しむ必要なんてないんだ……。 夏休みに入っても、大輝は三日に一回の頻度で家に来て、一緒に宿題をした。 「ほんとは毎日会いたいけど、あんまりしつこくして嫌われたら、俺、生きていけないし…」 そう自分で言って、しょんぼりとしていた。今でも充分しつこい気がするけど、それを言うと、大輝のすごく落ち込む様子が目に見えるようだったから、黙っていた。 それに、大輝と会うのは楽しくて、傍にいても嫌じゃない…。 「燈さ、二学期になったら、周りのこと気にしないで学校に来いよ。俺以外にも、燈のこと心配して早く元気になって来て欲しい、って言ってる奴らもいるから大丈夫だよ」 大輝が、もう随分と治ってきて、大きい絆創膏を貼ってある僕の首を見て、優しく微笑む。 「それに、俺がずっと傍にいるから」 「……」 それは、蒼一朗がいつも僕に誓う言葉だ。 蒼一朗だけだった僕の中に、少しずつ、大輝が入り込んできている気がした。

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