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第87話 僕の過去
「前に…燈が病院から帰ってきた次の日、俺、心配で見舞いに行っただろ?燈が熱を出して寝てて…。熱が下がったって言ったから、俺がプリンを食べさせて…。燈の服に落としちゃってさ、燈が拭いてる時に…見たんだ。キスマークが付いてるの…」
…ああ、あの時…見られてたんだ。
「前の日には何もなかった肩の後ろにも、紫色の歯型が付いてた…。そんなの付けれるのって、巽さんしかいないじゃん…。前の日からずっと一緒にいるのって、巽さんだけなんだからさ…。燈には怖くて聞けなかった。だから、巽さんに聞いたんだ。燈と恋人なのか、って」
僕と蒼一朗は、そんなんじゃないよ。
「巽さんは違うって言った。じゃあ、燈の事が好きなのかって聞いたらさ、おまえには関係ない、って言われた。俺は腹が立ったよ。だって好きじゃなきゃ、あんなに強く俺のもの…みたいな痕、付けないだろ?…それに、もしも好きじゃないのに、あんな痕を付けるような事をしてたんだとしたら…俺は許せないっ。…燈…もしかして無理矢理その…そ、ういう事、されてる訳じゃないよな…?」
…無理矢理じゃない。僕が望んでしていたことだ。
僕はそっと目を閉じる。
「燈?」
大輝が不安げな声を出した。
僕の過去を誰かに話した事はない。聞いても気持ちの良いものでもない。むしろ、嫌悪し軽蔑するだろう。
それでもーー。僕は大輝に話してみようと思った。
僕と蒼一朗の繋がりは、僕の闇と共にあるのだから。
僕は、冷たくなる指先をぎゅっと握り込むと、ゆっくりと瞼を上げて、大輝を見た。
「大輝…。僕と蒼の関係は、僕の過去を話さないと説明出来ない…。でも僕の過去を知ると、大輝は僕を嫌いになるかもしれない、軽蔑するかもしれない。僕から…離れたくなるかもしれない。それでも…聞きたい?」
大輝が、真剣な表情で、僕に身体を向けて両手を握ってきた。
「俺はさ…すごくしつこいんだ。どんな話を聞いたって、燈を嫌いにはならないし、なれない…。燈から絶対に離れない…。それに…俺は燈のことを全て知りたい。だから、燈のこと、全部教えて」
大輝の言葉に、胸がしめつけられる。
ほんとに?生まれてきてはいけなかった僕を知っても、そう言えるの?
僕は、ギシギシと軋む胸の痛みを堪えながら、大輝に全てを話し始めた。
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