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第88話 僕の過去

大輝が、僕の手を握った両手に力を込める。僕は少し俯いて、震える声を絞り出した。 僕の両親が、実の兄妹で愛し合っていたこと。 それを彼らの父親に知られ、しかも僕が母さんのお腹に出来ていたから、二人で家を飛び出したこと。 僕の祖父に見つからないように、いろいろな所を転々として暮らしていたこと。でも、とても幸せだったこと。 僕が小学生になってからは、引っ越すのをやめたこと。 二年生になった時に祖父に見つかり、両親が家に戻るように説得されていたこと。そして、母さんが追い詰められて、少しずつおかしくなっていったこと。 夏休み明けに僕が学校から帰ると、両親が心中していたこと。それを見てしまったこと。 その日から、祖父の家の離れで暮らし始めたこと。 祖父に、僕はいらない子だと嫌われ憎まれていること。 両親が死んだすぐ後から、蒼一朗が僕の傍にいて世話をしてくれていること。 死にたいくらい辛かったけど、蒼一朗が僕を支えてくれたこと。 五年生になって、祖父に会社の取引の為に、身売りをさせられたこと。 怖くて嫌で壊れそうだった僕を、蒼一朗が救ってくれたこと。蒼一朗が僕に触れると、嫌だった感触が消え、もっと触れて欲しいと思うようになったこと。 中学生になった時に、男の人に最後までされてしまったこと。 その頃には、蒼一朗が触れてくれるならと、我慢出来るようになっていたこと。 僕が男の人に抱かれる度に、蒼一朗とセックスしていたこと。蒼一朗に抱かれた記憶だけが身体に残って、嫌な記憶は消されていたこと。そうされることで、僕が救われていたこと。 三年生になって、急に身売りをしなくてよくなったこと。今の学校に合格する事を条件に、家を出してもらえたこと。 蒼一朗とは離れるはずだったのに、僕が家を出ると、蒼一朗も付いてきてくれたこと。 僕が両親の死のトラウマから、時々悪夢に魘されること。蒼一朗に抱きしめられると震えが収まること。 僕は全て話し終わっても、怖くて顔を上げれなかった。 大輝の手が僕から離れる。 びくりと揺らした僕の肩を、彼が優しく抱き寄せた。

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