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第五章(⑤)

 トミー・ガンの掃除を終えたカトウは、ニッカーにすすめられられた煙草を喫い、ひと息ついた。思ったより時間がかかった。遊底(ボルト)にこびりついていた油を落とし、小石を取り除いた後、ほかにも動作不良につながりかねないところがないか、丁寧にチェックしたからだ。  カトウが腕時計を見ると、すでに四時半近くになっていた。 ーー遅くならない内に、ガーランド銃も手入れしておこう。  そう思っているところへ、ちょうどクリアウォーターがサンダースを引きつれて、敷地の歩道を徒歩でやって来た。クリアウォーターはガレージの前で休憩していたカトウとニッカーに気づいて、軽く手を振った。 「待たせたね。十五分ほどで出発するから、準備をしてくれ」  そう言って、クリアウォーターが正面扉の向こうへ消える。カトウはジープのフェンダーの方にちらっと視線を向けた。ガーランド銃は、フェンダーに取りつけられたカスパードの中に収まったままだ。 「…あれをいじるには、ちょっと時間が足りないだろ?」  カトウの内心を見透かしたニッカーがやんわり諭す。カトウはしぶしぶその忠告に従った。  仕方がない。ガーランド銃も解体してきれいにしておきたかったが、それはまた帰ってきてからやることにしよう。  五分後。一階の広間から自分たちの荷物を回収し、カトウとニッカーは停めたジープに戻って来た。 「クリアウォーター少佐とサンダース中尉は、どの座席に座るんだ?」 「え? …ああ、サンダース中尉は行かない。今回、あの人は留守番だ」  カトウにとって、それは予想外の答えだった。ニッカーが運転手役を務めると聞いたので、てっきり最後の座席に座るのはサンダースだと思っていたのだ。 「じゃあ、あと一人は?」  カトウが訊ねると同時に、建物の正面扉を押し開けて、大柄な男がカバン片手に現れた。カトウを見て、その顔に気まずそうな表情が浮かぶ。カトウの方も「げっ」と内心でうめいた。  四人目の同行者は、先日のパーティでひと悶着を起こしたジョン・ヤコブソン軍曹だった。 「それじゃあ、行ってくる」  クリアウォーターは、一階の資料室にいるサンダースに声をかけた。見送りは不要と伝えたが、生真面目な副官は律儀に正面扉までついてきた。 「お気をつけて」 「ああ。留守はたのんだよ」  クリアウォーターが外に出ると、すでに正面玄関にジープが回されていた。  その周りで、彼の三人の部下がまだ座席にもつかず、ぎこちない距離を保って、煙草を喫っていた。愛想笑いを浮かべるニッカーを挟んで、左にヤコブソン、そして右にカトウ。  ……どういう状況か、クリアウォーターは即座に見当がついた。三人の敬礼に返礼した赤毛の少佐は、部下たちを横目にさっさと後部座席に乗り込み、いちばん大柄な男に振り返った。 「ヤコブソン。私の隣に座りなさい」  そのひと言で席は決まった。運転席にニッカー、助手席にカトウ。それから後部座席に大男のヤコブソンと長身のクリアウォーターが、やや窮屈そうに座った。 「そんじゃ、出発しますね」  ニッカーがエンジンをかける。幌のかかったジープはうなりを上げ、快調に走り出した。

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