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第五章(⑳)※性描写あり

 二人して、もつれるように幅の狭いベッドに倒れ込んだ。  クリアウォーターは足から靴をはね飛ばし、シャツを脱ぎ捨てると、カトウのシャツを乱暴にはぎ取った。  むき出しになったカトウの上半身は、思った通り細かった。  しかし、つくべきところにちゃんと筋肉はついている。それも、しなやかで柔軟性もありそうな。おそらく、人知れず(きた)えているのだろう。  唇に口づけながら、クリアウォーターは確かめるように細身の身体に触れていった。首筋から肩を過ぎ、鎖骨に触れたところで、わずかに皮膚が盛り上がっているのに気づく。 ーー1944年10月、跳弾による負傷。   摘出手術の有無:要確認。  カトウの経歴書に、確かにそう書かれていた。  傷跡を過ぎ、胸の突起にたどりつくと、クリアウォーターは容赦なくそこを攻め立てた。  重なる口の中で、カトウの上げる声が一段と高くなる。(あえ)ぎが混ざり出したのを見はからい、クリアウォーターは片方の手を下へ動かしていった。  胸から(へそ)へ、さらにその下に――。  ズボンの中のものをつかまれた時、カトウはびくりと身体を固くした。クリアウォーターはもう一方の手で、なだめるようにカトウの背中をなでた。身体を密着させ、愛撫していると、緊張が少しずつ、ほぐれていくのが分かった。 「……あ……ああ……」  濡れた声に、クリアウォーターは否応なく劣情をかきたてられる。  ズボンと下着を取りさり、相手のも奪い取り、ついに二人とも一糸まとわぬ姿になった。  クリアウォーターは、カトウの足に自分の太ももをからませた。  重なる肌の感触が、心に淡い歓喜をもたらす。固くなった互いのものが触れ合った時、それだけで射精しそうな興奮を覚えた。少しの間、呼吸を整えるためにクリアウォーターはカトウの身体を抱きしめた。色白のカトウの肌はすっかり温まり、十分に熱を帯びていた。  普段なら、もっと時間をかけて隅々まで味わう。しかし今夜ばかりは、そんな余裕はない。まるで十代の頃のように、クリアウォーターは心がはやり、抑えることができなかった。 ーー早く。一秒でも早く、彼とつながりたい。  クリアウォーターは、カトウの腰をまさぐった。そこからさらに下へ。唾液でぬらした右手の指を奥の孔に差し入れた時、カトウの口から息を鋭く吸う音が漏れた。 「大丈夫」クリアウォーターは、耳元でささやいた。 「君なら、耐えられる」  多分と、こっそり心のなかでつけ加える。  それからカトウが反論するより先に、キスで口を塞いだ。  カトウは全くの未経験のようだった。指を入れてしばらくすると、クリアウォーターは自分が先ほど言ったことを、撤回すべきかもしれないと思いはじめた。  正直、きつい。  おそらく今までクリアウォーターが関係を結んだ男たちの中で、一番きつかった。  カトウの口から洩れる息に、苦痛の色がにじむ。それでも、隣室の人間に行為が知られるのを恐れてか、けなげにもほとんど声を上げなかった。  ……きつかったが、それでも徐々にほぐれてくる。  少しすると、湿らした二本目の指も入った。確かめるように動かし、経験からぎりぎりいけると思ったところで、指を抜いた。  クリアウォーターの方も、そろそろ限界に近かった。 ーーーーーーーーー  ………太い二本の指が後孔から抜かれた時、カトウは正直ほっと息をついた。  しかし、次に起こることをすぐに思い出す。クリアウォーターのものが太ももに触れた時、カトウはこらえきれず、身体をよじって両足を閉じた。 「ま、待って……無理………」  覆いかぶさってくるクリアウォーターが、動きを止める。数秒の沈黙。それからびっくりするくらいに熱く湿った口で、カトウは耳朶(じだ)を噛まれた。 「――させてくれ」クリアウォーターはささやいた。 「頼む」  かすれて切羽つまった声に、普段の余裕は影も形もなかった。あるのは()きだしの欲望。それでも彼は、カトウに「頼む」と言った。  クリアウォーターという人間の本質に、カトウは偶然に触れた気がした。  そして同時に。この赤毛の(ひと)の願いなら、叶えてあげたいと思えてしまった。  カトウは目を閉じ、両足から力を抜いた。足を開かれる。額に優しいキスをされる。  その直後、今まで感じたことのない痛みが身体を貫いた。 「――――――っ!」  カトウは歯をくいしばった。悲鳴がもれそうになり、手で口をふさごうとするが、自分を犯す人間に両手をつかまれる。  口で口を塞がれた時、カトウはついにこらえきれずに「あ……あぁ……」と声をあげた。それに呼応するように、クリアウォーターの咽喉からも声が漏れる。  (つらぬ)いて、こじ開けて、身体の中にクリアウォーターが入ってくる。  その後は、もう記憶はぐちゃぐちゃだった。    互いの身体の湿った熱さ。  中のひだをこすられるたびにはじける痛み。  これ以上ないくらいに恥ずかしい行為ーーー。    ただただ声が外にもれぬようにしたことだけは憶えている。    枕の中に、クリアウォーターの口の中に、カトウは自分の悲鳴をくぐらせた。  ………クリアウォーターが果てた時、カトウは気を失う寸前だった。それでも、相手は執拗(しつよう)だった。あるいは律儀か。痛みで半分萎えていたカトウのものを撫でてしごくと、あっという間に絶頂に導いた。  互いの汗と体液で濡れたベッドの上で、カトウは垂直の眠りに落ちていった。

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