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第十章(⑬)

 ソコワスキー率いる捜査班に合流したクリアウォーターは、それから丸一日かけて彼らと共に若海(わかみ)組への奇襲作戦を立案した。その詳細は後に「U―121号」の書類番号で知られることになる。  立案・実行の過程で、クリアウォーターたちは様々な幸運にめぐまれた。なにより白蓮帮の頭目、莫後退(モー・ホウドゥエイ)の協力を得られたことが大きい。  (モー)はクリアウォーターの助言を受けて、すぐに潜入中の密偵を若海の屋敷から引き揚げさせた。その密偵は、戻るとすぐに対敵諜報部隊(CIC)の車に乗せられ、東京駅にほど近い参謀第二部(G2)のビルに連れてこられた。そして莫から言いつけれた通り、クリアウォーターたちに貴重な情報を提供したのである。  そこには、若海の屋敷のおおよその見取り図や出入り可能な場所、普段、どこに誰がつめているか、またその人数、武器の保管場所など、作戦の円滑な遂行に不可欠な情報が、数多く含まれていた。  さらに密偵の口から、屋敷で二日後に若海義竜の葬儀が執り行われることも明かされた。その場には、若海組の主だった人物たちが集まるはずだった。  屋敷を制圧するのに必要な人数について、最終的に一個中隊(約二百名)で話が通った。ソコワスキーはその半分でも十分だと考えたが、クリアウォーターが反対した。 「こういう時、兵力は出し惜しみすべきではないよ」  ジープ襲撃の一件で、若海組が旧日本軍の九九式短小銃や拳銃を保有していると分かっている。奇襲とはいえ、銃撃戦になる可能性は決して低くない。最大限、有利な立場に立てるよう、數は多く揃えるべきだ。  策定された計画を、ソコワスキーが参謀第二部のW将軍のもとに持ち込む。その間にもクリアウォーターは見取り図とにらめっこしながら、作戦の精度をより高いものに練り上げるべく、脳みそを動かし続けた。  …その光景を、ジョージ・アキラ・カトウ軍曹は間近で、やや呆然としながら見ていた。  

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