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第5話

あっという間に日曜日が来た。 本当に長潟教授、来てくれるのだろうか。 待ち合わせ場所と時間の連絡だって、こっちから急かしまくって、昨日、ようやく連絡がきた。 きっと、俺なんか想像がつかないくらいに急がしいんだろうな… 指定された駅の入り口でぼんやりと目の前のビルの広告を眺める、 地元にはない、高い建物たち… 1年も経つと慣れるもんだけど、最初の頃は、こんなビルにすら感動していた。 「澤川くーん」 「あっ、長潟教授」 声をかけられて下に視線をずらすと、教授がぴょんぴょん跳ねていた。 この人、本当に10歳年上なんだろうか? 「おはよう。待たせちゃったよね」 「いえっ、俺のためなんかに時間作ってくれて、ありがとうございます」 「とんでもない。最初は渋々だったけど、こうしてみると出かけるのもいいね」 「教授…」 「なんか、大学の外でまで教授はやだなぁ…、別の呼び方ない?」 「じゃあ、雪さん」 「ごほっ!?えっ、な、なんで下の名前!?」 「冗談です、長潟さん」 「もう!澤川くんまで僕のことおちょくってー!」 やばいくらい可愛い。 これで、すっげぇ論文とか書いてるから、ギャップもすげぇし… 「すみませんって。じゃあ、行きますか」 「あ、そうだね。どこ行くの?」 「秘密です」 「…、澤川くん、モテるでしょ」 「うーん…、まあ、それなりに」 「僕なんかとデート行くよりも、女の子と行ったほうがよっぽど良いんじゃない?」 「俺はそうは思いません」 「そう?」 「俺は長潟さんとデートがしたいんです」 「えっ、ええ!?な、なんかこう…、イケメンに言われると同性でもドギマギしちゃうね」 分かりやすく動揺する長潟教授も可愛い。

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