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第6話
「長潟さん、お腹空いてます?」
「あー…、うん…」
「空いていないですか?」
「僕、あんまりお腹が空くっていう概念が分からなくて・・・」
「?」
「昔からなんだけど、その、食にたいして関心がなくて…、食べたいとも思わないし。出されたら食べるけど…」
「なるほど…、だからそんなに細いのに食べなくても気にならないんですね。じゃあ、俺がとことん管理します」
「ははは、本当にお母さんみたいだね、澤川くんは」
教授の眉を下げて笑う、困り笑いみたいな顔が、俺はめちゃくちゃ好き。
「長潟さん、笑った顔、可愛いですよね」
「…、えっ、かわ!?」
思わずポロリとこぼすと、教授は耳まで真っ赤にして照れている。
「照れてる」
「も、もう!!年上を揶揄っちゃ駄目でしょ!」
「怒っても怖くないです」
「今時の若い子には敵わないよ…、僕、笑うの止めようかなぁ」
頬に手を当てて、教授は悩ましげな顔をしている。
「それは駄目です。俺、長潟さんの笑った顔、好きなので」
「それを止めてくれって言ってるのにー!」
「俺、揶揄ってません。むしろ、ちゃんと尊敬してますよ」
「それはそれで照れちゃうね」
教授って、なんていうか、こう…、頭を撫で繰り回したくなるんだよね。
年上だし、なんか凄い人だから、踏みとどまってるけど。
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