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第9話
教授は食が細くて、なかなか時間がかかったけど、なんとか完食してくれた。
時間も限られているので、少し休んですぐに退席する。
財布を出そうとすると、教授に制された。
「さ、澤川くん。これは、君へのお礼だから、僕が払うよ」
「え…、でも、俺のわがままだし…」
「ふふ、年下なんだから、素直に奢られなさい」
「…、ご馳走様です」
「うん」
教授は満足そうに笑うと、俺の頭に手を置いた。
ちょっと背伸びしてるのが、かっこつけきれてなくて可愛い。
180cm以上あるから、ここ最近は頭を撫でてもらう事なんかなかったから、少しかがんで教授の手を満喫する。
「あはは、なんか大きい犬みたいだよね、澤川くん」
「犬…」
「うん。犬種は…、ハスキーかシェパードかな」
「強そうですね」
「でも、お利口で忠誠心があって、正義感が強いんだよ」
「…、褒めてます?」
「もちろん」
「ありがとうございます…」
今は犬でもいいや。
「あら、仲良しなのね~。今時の先生と生徒ってこんな感じなのかしら?」
「いえいえ!特殊だと思います、ははは…」
おばちゃんが声をかけると、教授は慌てて手を離した。
名残惜しい…
「はい、お釣り。また来て頂戴ね」
「ええ!大学からもそんなに離れていないし、美味しかったのでまた来ます」
「長潟さんが行くときは俺も誘ってください」
「あ、う、うん」
「本当に仲良しなのね~、また2人で来るの、待ってるわね」
おばちゃんに頭を下げて、2人で外に出る。
「今日、めちゃくちゃ天気いいですね」
「そ、そうだね」
「長潟さん、あそこの料理だったらまた食べたいって思いますか?」
「うん、良い所、教えてくれてありがとう」
「いえ、よかったです」
いつか教授に「お腹空いた」って言って欲しいな。
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