「…、すみません」 「謝らないで。ほら、恋愛は自由って言うし！」 「でも、長潟さん、正直気持ち悪いって思いません？」 「そんな風には思わないけど…」 「けど？」 「な、なんで澤川くんが僕みたいなのを好きになったんだろうと…、思って…」 「長潟さんは、俺なんかよりもずっと魅力ある人です」 「ええ！？そ、そんなことないよ。世間の評価で言ったら、僕は釣り合ってないよ」 「じゃあ、俺が教えてあげます。長潟さんの良い所」 俯いて足元を見ている長潟さんの顎に手を添え、目が合うように顔を上げさせた。 俺と目が合うと、長潟さんが驚いた顔をする。 「長潟さん」 「えっ、ええっ？」 自分でも分かるくらい、緊張で声が掠れている。 長潟さんは顔を真っ赤にして目線をそらす。 なんとか顔ごと逸らそうとしているが、俺は逃がさないようにしっかりと掴んでいた。 目が潤んでいて、かわいい。 俺は徐々に長潟さんに顔を近づける。 「キャー！！あれ！見て！」 「ヤダァー！？リアルのやつ！？」 「攻めがイケメンすぎんか！？」 「バカ、あれは受けがいい味出してんの！」 近くにいた女の子たちの悲鳴で、ハッとした教授が、俺の口に手を当てて押し返した。 「な、なんてことするの！公衆の場で！」 「チッ…」 「は、恥ずかしくて死んじゃうかと思った…」 「公衆じゃなかったら良いんですか？」 「そ、そういうことじゃないでしょ！？もう…、とにかく、この場から立ち去ろう」 「…」 焦ったように俺の手を引いて、この場から移動しようとしてる。 俺の手を引いた瞬間のギャラリーの目も凄かったんだけど、教授、気づいてないな… っていうか、耳まで真っ赤なんだけど…、可愛い。 ふいに教授が振り返った。 「何ですか？」 「なんか静かだと思ったら笑ってるし…、揶揄わないでって言ってるのに」 「揶揄ってないですって」 「もう、澤川くんは中々掴めないな～」 クサいこと言いますけど、俺は教授に心を掴まれてます。