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第13話
とりあえず入ったカフェで、教授はカプチーノのラテアートを眺めている。
「…、長潟さん、苦いのダメなんですか?」
「いや…、ぜんぜん苦手とかじゃないんだけど、ブラックコーヒーも飲もうと思えば飲めるんだけど…、誰かさんのせいで頭回らないから糖分を…」
「そうですか。早く飲まないと冷めますよ?」
「わ、分かってるんだけど…、このアート、すっごく良い…」
猫のラテアートを目を輝かせながら眺めている。
「可愛いですね」
「ほんとだよね~、惜しいけど飲んじゃおう」
「長潟さんが、可愛いですね」
「ゴホッ!?ゲホッ、ゲホ…、何!?」
「あー、勿体無い」
「今のは、10割澤川くんのせいだからね!?」
「可愛いものに可愛いって言って何が悪いんですか?」
「可愛いって…、僕、君の10コ上なんだけど」
「年なんか関係ないです」
「うーん…、僕には威厳がないのかなぁ…」
「長潟さん、ひげになってますよ」
「ひげ?」
教授の上唇の上にカプチーノの泡がついていた。
ポカンとした顔の教授の口を指で拭う。
「あ、ついてたなら言ってくれたら、自分で拭くのに」
「あま…」
その指を口に入れると、泡だけなのに、甘ったるい味がした。
「うわあああ!?な、なっ!?舐めた!!」
「シーっ。ほかのお客さんに迷惑ですよ?」
「うう…」
心なしか、泣きそうな顔をしている。
「イケメンだからって、何でも許されると思ってるでしょ」
「思ってないです。俺、イケメンですか?」
「十中八九ね。今の、その辺の男性がしたら、セクハラだからね」
「…、俺はセクハラにならないですか?」
「…、どうなんだろう…、僕にとったらならない、かな」
「それって、嫌じゃないってことですよね、長潟さん」
「そ、その聞き方はずるいと思うんだけど…」
「俺が突っ走ってるのは分かってます。でも、大学じゃこんなこと聞けないので」
「う~ん…、嫌悪感はないけど…、迷惑かな」
「…、俺、迷惑でした?じゃ…、邪魔ですか?」
「いやいや。澤川くんと話したり、こうして出かけたりするのは、楽しいよ。でも、さっきみたいな…、ドキっとするのは…、心が乱されるというか、自分じゃなくなるというか…、迷惑かな」
「じゃあ、長潟さんは俺が嫌いなわけじゃないんですね?」
「嫌いだなんて!好きだよ。あ、違くて、人として好きっていう話で…」
自分で言った「好き」に動揺するなんて…、可愛い。
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