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第21話

澤川くんと会わなくなって1ヶ月が経つ。 相変わらず、ぼんやりと毎日を過ごしていた。 全然、研究に身が入らない。 休憩がてら、たまには外に出てみようと思い、中庭に出てみた。 なかなか良い天気だし、中庭もかなり整えられていて、過ごしやすい場所になっている。 初めて気づいたかも。 ふと、木の下にあるベンチに見慣れた人がいるのを見つけた。 一ヶ月ぶりに見る澤川くん…、転寝してる。 授業には来ないけど、ちゃんと学校には来てるんだな。 彼は僕のことを避けているかもしれないけれど、正直、僕は彼と仲良かった頃に戻りたい。 「さわっ…」 呼びかけたところで、澤川くんの隣に女の子が座り、肩を揺すって彼を起こした。 2人は何やら楽しげに話している。 やっぱり、同世代の女の子の方が、澤川くんには釣り合ってると思う。 僕みたいなのより、ずっと… それでも、僕は少しだけ彼との未来を想像してた… 心の底でほんのちょっと期待していたんだと思う… もう、全ては手遅れだ。 そう思った瞬間、少しだけ、視界が揺れた気がした。 そういえば、いつからご飯食べてないんだっけ…? とりあえず、心の中で区切りもついたし、また研究に没頭しよう。 何かしていないと、黒い塊に押しつぶされてしまいそうな気がした。 それが何なのかは分からないけれど… フラフラと屋内に戻ると、いろんな意味でお世話になっている教授がいた。 「やあ、長潟くん。ちょっと研究の手伝いをして欲しいんだが」 「あ…、今日はちょっと」 「雪」 「はい…、ぜひお手伝いさせて頂きます…」 「そうかそうか。長潟くんはいつも研究熱心だから助かるよ。さあ、行こう」 「はい」 ああ、また地獄の時間が始まる… 再び、視界がグラグラしてきた。 さっきと違って、一瞬ではなく、ずっと揺れ続けている。

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