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第25話

また教授のほうに視線を移すと、フラフラと、でっぷりと太った教授と一緒に室内に入るところだった。 噂を信じるなんて馬鹿らしいし、普通に教授同士、仲が良いだけかも知れない。 でも、なんだか嫌な予感がして、いてもたっても居られなくなった。 「ごめん、栞ちゃん。俺、ちょっと…」 「はぁ?まさか、教授を追いかける気?」 「なんか心配で…」 「なで…、長潟教授だってもう30なんだから、本気で嫌だったら自分で何とかするでしょ?」 「だけど!教授、脅されてるかも…」 「はぁ、もう好きにすれば?」 「うん。ごめん、そうする」 「ほんとムカつく~、夏樹のこと嫌いになりそう」 「そっか。俺は栞ちゃん、嫌いじゃないよ」 「なおさらムカつくわ」 ちょっと拗ねている栞ちゃんを置いて、俺は、教授の後を追って構内に入った。 おそらく、向かった先はたぬきの研究室かどこかだと思うけど学科が違うから分からない。 とりあえず、工学部のほうを片っ端から回ってみよう。 構内を走り回っていると、顔見知りの男子に話しかけられた。 「あれ?数理の…、同級生だよな?なんで走ってんの?」 「え、ああ…、ちょっと人を探してて…」 「誰?俺が知ってる人なら教えられるかも」 「長潟教授と、あと…、あの、たぬきっぽい工学部の…」 「たぬき?ああ、あはは、滝田教授かな?そういえばさっき、すっごい細い人と歩いてたな…」 「それが長潟教授、たぶん」 「あの人がかぁ」 「で、どこ行ったかわかる?」 「たぶん、方向的に滝田教授の研究室じゃないかな?」 「それ、どこにある?」 「えっと~…、たしか、工学部の棟の5階じゃないかな?入り口に教授の名前が書いてるはず」 「ありがとう!今度、飯奢る。じゃあ」 「え、お、おう…」 こっちの棟は滅多に来ないから、階段やエレベーターの位置ですら、構内図を確認しないと分からない。 早くしないと…、教授がヤバイ… 5回についてすぐのドアに「滝田 才里」と書かれたプレートが掲げてあった。 やっぱ狸じゃん、と思いつつ、ドアに手をかける。 予想に反して、そこの鍵は開いていた。

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