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第34話

書類の山に頭を埋もれさせ、ぼんやりと失敗作を眺める。 あと2~3分早く戻ってきていたら… いや、澤川くんを発見した時点で失敗は目に見えていたけど。 ボーっとしていると、大きな手が自分の頭の上に置かれた。 すごく馴染んだ感触。 「澤川くん?」 「…、はい、俺です」 「皆は?」 「みんな?」 「あ…、さっき、中庭で3人でいるところ見たから」 「雪さんが外に出るなんて珍しいですね」 「ちょっと眠かったから、コーヒーでも飲もうと思って」 「そうですか。俺に言ってくれれば買ってきたのに」 「澤川くんをそんな風に扱えないよ」 「俺、雪さんのお願いなら何でも聞きたいです」 「…、そう」 「?…、なんか今日の雪さん、アンニュイですね」 「ア…、アンニュ?」 「気だるげです」 「そうかなぁ…、うーん、そうかも」 「じゃあ、今日は研究お休みですね」 「いや、あと1~2時間したら再開するよ」 「…、残念」 嬉しそうな顔をした澤川くんが一気にしゅんとなる。 そんな風にコロコロ変わる表情が、幼く見える。 ハッ… もしかしたら、こういう所が僕が澤川くんを苦しめているのかも… 僕のせいで…、澤川くんが苦しむのは見たくない。 「雪さん?本当にどうしたんですか?体調悪いですか?」 「ううん。体調は平気」 「じゃあ、何か心配事ですか?教えてください」 「本当に大丈夫だから」 「…、俺、そんなに頼りないですか?」 「そういうわけでは…」 「じゃあ、俺に言いたくないことですか?俺に悪いところあったら直すので、言ってください」 「ち、違うよ。澤川くんは悪くないから。僕の問題」 「…、教えてくれないんですね」 「…」 澤川くんは今までにないくらい、傷ついた顔をしている。 だからといって、10歳も下の子に「僕のどの辺が澤川くんを悩ませてるの?」って聞くのも躊躇われる。 大人なんだから、自分で考えろよって… 「雪さんにとって、俺って何なんですかね…」 「へ?」

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