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第35話
「…、なんか、俺ばっかり雪さんのこと好きで…、ちょっと虚しいです」
「ごめん、そんなことないと思うんだけど…」
「いいです。すみません、俺、なんか鬱陶しくて…、邪魔するつもりはなかったんですけど…、俺、行きますね」
「えっ、まっ…、て…」
澤川くんは脱兎のごとく走り去ってしまった。
また、澤川くんを傷つけた…
あー、変なプライドなんか捨てて、僕のどういうところで悩んでいるのかちゃんと聞けばよかった…
また書類の山に突っ伏す。
仕事とはいえ、あと1~2時間で、僕のメンタル、回復するかな?
「やあ、雪。相変わらず凄い研究室だね」
「えっ、あっ、滝田教授…」
「そんなに警戒しなくても、私の食指は君には伸びないよ」
「…、何かご用ですか?」
「冷たいね。まあ、私のことはちゃんと吹っ切れた証拠だね」
「滝田教授だって、結構ドライじゃないですか」
「私はそういう割り切った関係を保てる子にしか手は出さないからね」
「…、滝田教授のほうからいらっしゃるなんて、珍しいですね。で、何かご用ですか?」
「ふふ、いや、そこで随分とヒドイ顔をした生徒とすれ違ったからね…、来て見たら君もなかなかヒドイ顔だ」
「やっぱり…、相当傷つけちゃったんですね、僕…」
「おや…、普段は他人のことなんて興味ない雪が気にするなんて」
「酷い言い様ですね…、僕にとってあの子は"大切"なんです」
「ふむ。大切なのに傷つけたのか?」
「…、だから困ってるんです…、近づけば傷つけるし、遠ざけても傷つけちゃうし…」
「三十路とは思えない恋愛相談だな」
「言わないでください」
悔しいけど、滝田教授の言うとおりだ。
30にもなって情けない。
でも、いくら考えても、なにをどうすれば澤川くんの悩みを解決出来るか分からないし、彼とのベストな関係も図りかねている。
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