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第44話

服を脱いで、再度浴室に入ると、澤川くんはまだ湯船に浸かっていた。 「のぼせてない?」 「大丈夫です。あ、俺、背中流しますよ?」 「え?」 「温泉の醍醐味じゃないですか?」 「個室だけどね…。じゃあ、お言葉に甘えて」 そう言うと、澤川くんは湯船からあがってきた。 なんていうか、澤川くんってガッシリしてるんだよな… マッチョってわけではないんだろうけど、スポーツしてるんだろうなって思わせるような筋肉があるし。 年上としては、恥ずかしいんだけど。 僕、ガリガリだし… でも、背中流してもらうなんて生まれて初めてだから、ちょっとワクワクする。 「はい、スポンジ」 自宅から愛用している体用のスポンジも持ってきた。 「…、雪さん、こんなメルヘンなスポンジ使ってるんですか?」 「い、いやいや!見た目はアレだけど、使い心地がベストなんだって!」 澤川くんは、僕のクジラ型のスポンジをまじまじと眺めている。 たしかに、三十路が使うには可愛すぎるデザインだけど、機能性がとてもいい。 肌触りと泡立ちがとても良くて、5個ほどストックがある。 「じゃ、じゃあ、背中流しまーす」 「うっ…、お願いします」 なんか引かれてる気がする… 今度からは澤川くんを含め、人前では使わないようにしよう。 「あ、でも本当に泡立ちが良いかも知れないです」 「でしょ!肌触りも良いんだから!」 「ぷっ、そんな必死にならなくても、似合ってますよ、クジラさん」 「なっ!?また馬鹿にして!」 「馬鹿にしてないです。可愛いって言ってます」 「か…、かわ…」 「照れてる」 「照れてなっ、ひゃあっ」 背中を滑っていたスポンジが脇腹を掠めた。 「雪さん、脇弱いんですか?」 「ち、違う。油断してただけで!」 「ふーん?」 「ひゃあっ、あぅっ、いいから!背中だけで十分だから!!」 「えー、遠慮しないでください」 「やだやだ!やぁっ…、ふっ、うぅ…」 それから、澤川くんによる、脇腹責めが始まった。

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