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第47話
お風呂に満足して上がると、澤川くんは緩く浴衣を着て、窓側の椅子に座っていた。
横顔がなんともアンニュイ…
しばらくジーッと眺めていると、僕に気づいた。
「雪さん?どうしたんですか?」
「あ、いや。なんか黄昏てたから」
「なっ、声かけてくださいよ!恥ずかしい…」
「なかなか絵になってたよ」
僕は笑いながら、向かいの椅子に座った。
「そういえば、後少ししたら料理持ってくるって仲居さんが言ってました」
「そっか」
「雪さん、俺が休みの間、ちゃんと食べてました?」
「え、あー、まぁ…」
「本当に?」
「1日、1食くらいは…」
「はぁ。俺との旅行中は3食きちんと食べてもらいます。あと、間食も取ってください」
「えぇ…、分かった…」
「ちゃんと美味しいお店とかもチェックしてるんで、雪さんに美味いって言わせます」
「ふふ、相変わらずだね」
「で、さっきの…、どういうことです?」
「さっきの?」
「もう忘れたんですか?キスマークです。許したつもりないですよ」
「うっ…、いや、僕も寝ぼけてたから、ハッキリとは言えないんだけど…」
「寝ぼけてた!?ベッドを共にしたってことですか!?」
「ちっ、ちがうよ!い、いつも通り研究室の机で居眠りしちゃってただけ!」
「どっちにしろ隙だらけじゃないですか」
「そうなんだけど…。なんか、うっすら寝てる時に滝田教授が部屋にいた気がするんだよね。でも、本当に何もなかったはず!」
「まぁ、雪さんとシてたら、それはなんとなく分かりました。すごく濃かったし」
「こっ!?も、もう!デリカシーないんだから!」
「ははっ、雪さんって時々女の子みたいなこと気にしますよね」
「もぉ…、澤川くんには敵わないよ」
「俺だって、雪さんの可愛さには敵いません」
「そういうの、辞めてくれる?」
結構真剣に注意したものの、澤川くんは笑って「はいはい」と言うだけだった。
はたから見たら、大学生とその教授、とは思えないかもしれない。
まぁ、好都合なんだけど。
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