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第50話

長めの散歩から戻ると、布団が2組、20cmほど間を空けて敷かれていた。 布団で寝るの、久々かも… 普段はベッドだし、仕事で遠出したときはビジネスホテルだし… 「雪さん、布団、くっつけてもいいですか?」 「えっ…」 昔から、隣に誰かいる中で眠るのがとても苦手… 修学旅行も、部活の遠征も、泊まった翌日は寝不足になってしまうんだよね 「だめですか?」 「うぅ…、い、いいよ。好きにして」 僕は澤川くんに弱い。 期待の篭った目で見られると、つい応えたくなってしまう。 明日は寝不足確定だな… 「雪さんって、1人じゃないと眠れないタイプですか?」 「え、う、うん」 「安心してください。運動すればぐっすり眠れますよ!」 「運動?これから?」 外はもうすっかり真っ暗だし…、卓球とか? いや、でも、旅館に卓球台なんて、ないはず… 布団をぴったりとくっつけた澤川くんが、片方の布団の上に座り、足の間をぽんぽんと叩く。 「え、な、なに?」 「ゆーきーさんっ、ここ、座って」 「や、やだ」 「雪さん、早く」 「は、恥ずかしいって!布団、2組あるし」 「雪」 「なっ…、急にそれはずるい…」 射抜くような目で見つめられて、僕は従うしかないと諦めた。 そろそろと澤川くんの足の間に腰を下ろす。 と、後ろから抱きしめられた。 「えっ、ちょっ…」 驚いて、若干抵抗するけど、澤川くんの腕に力が篭り、封じ込められた。 「ずっと触れなかったから」 「お、お風呂で散々触ったじゃん」 「あれから何時間経ったと思ってるんですか?こんなに近くにいるのに触れないなんて、拷問です」 「お、大げさな…」 「浴衣の雪さん…、すごくエロいです」 「み、見なくていいから!」 「白衣の雪さんも好きですけどね」 「うぅ…、耳元でそういうこと言うの、やめてくれる?」 耳どころか、首まで真っ赤になってる気がする… 僕なんかの貧相な浴衣姿より、澤川くんのほうがよっぽど… ぴったりとくっついた澤川くんの体を背中で感じるけど、すっごく硬くてがっしりしている。 「雪さんは、自分の可愛さとエロさを自覚して、警戒するべきです」 「誰も三十路のおじさんなんか狙わないって」 「何言ってるんですか…、俺にも滝田教授にも狙われてるくせに。きっと、もっといます」 「いないって!澤川くんのほうこそ、気をつけなよ…、世には誘い受けって言うのがあるんだから」 「誘い受け…?」 「そ、そのっ…、僕みたいにいっ、挿れられる側が、襲うってこと!」 「…、それ、雪さんはしたことあるんですか?」 「あ、あるわけないでしょ!?」 「本当に?」 「ないって!」 「じゃあ、俺にしてみてください。誘い受け」 「なっ!?」 「それで判断します」 「な、生意気…」 年上だってところ、分からせてやらないと…

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