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第2話
「そういや修学旅行って何持ってく?」
会話が止み微妙な空気が流れそうになったが、笠原のその言葉で皆の意識が修学旅行に移り変わる。
純たちは三年生に進級し、この学校での生活も一年を切った。クラス替えがないので、あまり実感はないけれど、この二年間はあっという間だったような、長かったような、どちらにも感じてなんだか感慨深い。
始業式後の席替えで拓人と席が離れてしまったのは残念だが、来月の修学旅行は自由な班決めでいつもの三人と一緒になれたので楽しみだ。
「何ってしおりに書いてあったやつだろ?」
「お菓子も持ってくー」
拓人は不思議そうに首を傾げ、勇樹は張り切って答える。
「ゲームとか漫画は?」
「え、荷物になるじゃん」
笠原の問いに勇樹が答えると、拓人も畳み掛けるように言う。
「てか、ゲーム持ち込み禁止じゃね?」
「……いや、そうだけどさあ。え、皆飛行機で何すんの?」
そんなくだらない会話をしているうちに鐘が鳴り、SHR の時間がくる。担任の先生が教室に来ると皆自分の席に戻っていった。
三年生になったら成績オール五をとるように正和から言われているから、授業は今まで以上に真面目に受けている。今日もしっかり予習と復習を済ませてきたので、どこを当てられても問題ない。
家ではベッドに連れ込まれることが多く、なかなか時間が取れないけれど、それでも空き時間を見つけてこつこつ勉強している。
夕方になり授業が終わると、拓人と一緒に下校する。来週までは面談週間で、部活も休みらしい。
「──純って二者面いつ?」
「んー、来週の火曜」
靴を履きながら答えて、上履きを靴箱に戻して外に出る。
二者面談では担任の先生と卒業後の進路について話すことになっているが、純もそれについては悩んでいた。
一度は正和の仕事を手伝うと決めたのだが、進学校とあり、周りがみんな受験勉強を始めたので、純は内心焦りもあった。卒業後、本当にこのまま彼の隣で手伝うだけでいいのか、と。
正和は進学することも進めてくれたし、外で仕事をする以外なら自由に決めたらいいと言ってくれた。
彼に早く追いつきたい、金銭面で負担をかけたくない、という焦りから彼の仕事を手伝うことを決めてしまったけれど、きっとこのままではいつまで経っても彼と対等になれないし、自立できない。
彼はそうする必要がないと言うけれど、いつまでも彼に寄りかかって生きていくつもりはないのだ。
改めて考えると、やはり進学した方が良い気がしてきて、純は頭を悩ませている。
借金や今の学費、さらに進学するとなると、金銭面でまた彼に迷惑をかけてしまうから、簡単に決めることはできない。もちろん、彼は無条件で応援してくれるけれど、やりたいことも勉強したい分野もないのに中途半端な気持ちで進学するのは憚 られる。
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