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第12話

 通話ボタンを押して恐る恐る耳に押し当てる。すると、すぐに彼の柔らかな声が耳孔を擽った。 「もしもし、純?」 「ん……」  小さく返事をし、手を拭いたティッシュを意味もなく丸めて彼の言葉を待つ。 「もしかして寝てた?」 「ううん」 「ふふ、なんだか久しぶりだね」  弱い耳を撫でるように入ってくる彼の声が心地良い。彼の声を聞いていたら再び昂ってきて、我慢できずにゆっくり下に手を伸ばす。 「っ……は、ぁ」 「お兄さんとはどう? 上手くやれてる?」 「まあ、なんとか…っ、正和さんは?」  彼の声をもっと聞きたくて、気のない返事をしながら早々に聞き返す。そうすれば、彼はすぐにそれに答えてくれて、純の願い通り電話越しに甘ったるい声音が響いた。  そっと目を閉じて、先走りで濡れたピアスを転がす。蜜口を(くじ)るように親指で擦り上げれば、じんじんと痺れるような切なさがせり上がって、吐息も熱を帯びる。 「ふ、っぁ」 「だからさ、──って聞いてる?」 「ん、きぃてる」  くちゅくちゅと先端のくびれを扱き上げて、脚を震わせる。  彼の声を聞きながらの行為は先ほどよりも気持ちよくて、欲望のまま右手を動かし、スマホを持つ手にぎゅっと力が入った。 「…………純、もしかしてヤラシイコトしてる?」 「っ……!」  彼の訝しむような声に純の体はギクリと固まる。声は抑えていたはずなのに、彼にはなんでもお見通しらしい。 「やっぱり。電話出た時から様子が違ったもんね」 「違っ……」 「やらし~」  彼はくすくす笑った後、情欲を煽るように「じゅーん」と低く掠れた声を出した。甘ったるい囁き声に思わず耳を覆いたくなって、それでも彼の言葉が聞こえなくなるのは嫌で、目をぎゅっと瞑って堪えた。 「手伝ってあげる。今、お兄さん近くにいる?」 「隣の、部屋に」 「そっか。じゃあ、あまり声出せないね」 「……ちょっとなら、大丈夫だと思う」  何言ってるんだ……と思いながら唇を噛んで、かあっと熱を持った頬に手の甲を当てて冷ます。 「どこ触ってるの?」 「っ……、ま、まえ」 「ふーん。じゃあ、乳首。いつも俺がしてるみたいにいじってみて」 「────」 「じゅーん」  甘美な誘惑には勝てなくて、スマホを耳に押し当てたままベッドに置き、そろそろと胸の尖端を摘む。  彼がしてくれるように指先でクニクニと捏ね回せば、下腹部にいっそう熱が溜まって、焦れったさに腰が揺れる。もどかしい快感に追い詰められて、右手も自然と上下に動いた。 「はっ……ぁ」 「気持ちいい?」 「い、い……っ」  指先で引っ掻くように尖端を擦れば、ビリリとした電流のような甘い痺れが全身を震わせる。

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