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第19話
「ご飯にしよっか。すぐ作るから待ってて」
そう言ってスーパーの袋を拾い上げると、実家用に買った食材を冷蔵庫にしまってくれる。
純も手を洗ってキッチンに立つけれど、彼は迎えにくる前にある程度準備していたのか、手伝うことはほとんどなかった。ふっくら炊き上がった白米を茶碗によそって、テーブルに並べる。
「実家ではちゃんと食べてる?」
「食べてるよ。ロールキャベツとかコロッケとか」
「え、純が作ってるんだよね?」
「そうだけど……あ、兄ちゃんのリクエストでチリコンカンも作った」
「……なんか俺の時より手が込んでない?」
「えー、そんなことはないと思うけど」
夕食はだいたい兄のリクエストで作っているから、そんなことを言われても……と純は苦笑する。それに正和に作るときは品数も多めだから、かなり手間をかけているつもりだ。
「そうかなあ」
「じゃあ、食べたい物言ってよ。そしたら俺もできる範囲で作るし」
「いや、純が作ってくれたものなら何でも嬉しいよ」
「……そう言ってまた『……ずるい』とか言うんでしょ」
正和の話し方を真似して言えば、彼は苦笑して席に着いた。純も彼の向かいに腰掛けて、両手を合わせる。
「んー。じゃあ、今度コロッケ作ってほしいな」
「わかった」
「楽しみにしてるね」
彼も嬉しそうに笑って箸を握る。やはり二人で過ごすこの時間は特別で、一分一秒がとても短く感じられた。
「そういえばもうすぐ修学旅行だっけ?」
「うん、再来週」
「どっかで会えたりしないかな~」
「え!? ついてくる気?」
「ちょっと悩んでる」
彼なら本当について来そうで、色んな意味でドキドキする。けれど、意外にもあっさりとした答えを出した。
「まあでも、せっかくの友達同士での旅行を邪魔しちゃ悪いしね。やめとくよ」
「正和さんらしくない……」
「そう? 電話はするよ」
クスクス笑った彼は食べ終えた食器をキッチンへ下げて、ケーキを持ってきてくれる。
「あ、いちごだ」
「あーん、してくれたら、あげる」
「はあ?」
「ほら、早く」
隣に座った正和にフォークを渡される。ケーキを食べさせるよう要求してくる彼はなんだかとても楽しそうだ。
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